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白石あづさ

日本大学芸術学部卒。地域紙の記者を経て約3年間の世界放浪へと旅立つ。現在はフリーライターとして旅行雑誌などに執筆。著書に「世界のへんな肉」「世界のへんなおじさん」など。

中央区は石マニアを狂喜させる宝の山

公開日: 更新日:

「地質のプロが教える 街の中で見つかる『すごい石』」西本昌司著 日本実業出版社1600円+税

 私が暮らす築地は銀座や東京駅、日本橋あたりまで徒歩圏だ。散歩がてら新しい店を探したり、人々のファッションを見るだけでも楽しい。しかし、その中央区が、石マニアを狂喜させる宝の山であるという。そんなに石があったっけ!? 

「人の顔よりも石ばかり見てきた」という筋金入りの石博士・西本氏が書いた“石ガイドブック”片手に銀ブラしてみよう。まず、4丁目の銀座和光の壁面はピンクの花崗石。国内数カ所で採掘されているが、これは岡山の万成石だ。偶然にもお向かいの銀座三越の外壁は同じく花崗石だが、こちらはイタリア産。

 さてそこから銀座通りを通って日本橋へ向かうその歩道も、東京の路面電車で使われてきた敷石、花崗石が再利用されているのだとか。2頭のライオンが迎えてくれる日本橋三越に到着すると、1階の階段の壁に……アンモナイトの化石!? どこだ? 怪しい動きに店員さんの視線が痛いが、床も2階はポテチーノ、5階は蛇紋石とフロアごとに違う床であるらしい。

 日本橋から西へ向かうと東京駅の黒いトンガリ屋根が見えてくるが、その屋根が国産の石だと知っている人はいただろうか。しかも遠い石巻市からやってきた石だ。

 駅舎の建て替えのため、雄勝石を6万枚も用意したのだが、運ぶ前に津波で流されてしまったそう。急きょ、スペイン産になりかけたが、雄勝の人たちは被災して食事もままならない中、2週間かけて必死に回収。2億5000万年前の海底に積もった泥から形成された石が、津波で流されつつも東京駅のてっぺんで輝いているなんて。これからはレンガの壁よりも屋根を褒めたたえたい。

 その東京駅の地下、KITTEへの地下通路もただの白い壁ではない。ジュラ紀の石灰岩にハチの巣模様が見えるが、これはサンゴの化石。いつもの通路に太古ロマンがあふれだす。どうしよう、作者の術中にはまって、うっかり石ガールになってしまいそうだ。石壁や柱をなぞっている変な女がいたらそれは私かもしれない。

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