超高齢化社会には避けられない認知症。しかし、その実態は医師も知らず、その危機は高齢者だけでもない。

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「告白します、僕は多くの認知症患者を殺しました。」石黒伸著

 認知症には4つの型がある。アルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型、脳血管性。これらが混合する場合やその他の神経難病を併発しているケースもある。したがって投薬治療のパターンも個人差が大きいわけだ。

 ところが一般に認知症治療は4つの認知症中核薬(アリセプト、リバスタッチパッチ、レミニール、メマリー)を機械的に投薬するだけ。そこに易怒(いど=怒りっぽくなること)、興奮、妄想、徘徊などの症状が出ると、判で押したように非定型抗精神病薬が処方されるのだ。しかし薬に敏感なレビー小体型の人などは、マニュアル通りに投薬すると量が多すぎて副作用が出るという。

 著者は大阪・御堂筋の近くで開業する在宅医。かつては著者も他と同様にマニュアル通りにしていたが、名古屋の開業医と出会って「コウノメソッド」に開眼。製薬会社が決め、厚労省が認可した薬の「増量規定」に反対し、国会議員への働きかけの一方、独自の治療を地道に続けてきた。本書のタイトルの「告白します、僕は多くの認知症患者を殺しました」は、かつての自分の無知を悔い、認知症の在宅治療に専心する決意の表れだ。(現代書林 1400円+税)

「認知症とともに生きる私」クリスティーン・ブライデン著/馬籠久美子訳

 1995年、まだ46歳の若さで認知症と診断されたオーストラリア女性の著者。当時、大学生から小学生まで3人の娘をかかえて離婚したばかりだった著者は途方に暮れる。しかし豪州政府のエリート官僚だった著者はくじけない。あらゆる治療法を試しながら、若年性認知症の当事者として発言し、本も出版。認知症が自己アイデンティティー喪失の病であることを暗に認めつつ、それに負けないための認識や視点を説く。

 認知症の患者はすべてを均一に理解できないのではなく、まだら模様に記憶を失う。ゆえになお周囲からも人間的な敬意を必要とするのだと伝わってくる。(大月書店 2000円+税)

「『認知症七〇〇万人時代』の現場を歩く」佐藤幹夫著

 認知症というと家族のケアか有料老人ホームか老人病院の選択肢しかない、と思いがち。その常識を裏切り、地域ぐるみで認知症の高齢者を見守り、みとる例がある。

 たとえば滋賀県では東近江市に「チーム永源寺」や「三方よし研究会」と称する組織があり、医師やヘルパー、ケアマネジャーから地元のお寺や駐在さんまでが連携して高齢者のケアに当たる。著者はフリージャーナリストとして高齢者や知的障害者のケア問題に取り組み、日本全国の事例を精力的にルポ。本書はその成果だが、どの地域でも決まった方法はなく、ささいだが親しみにあふれた個々人の気遣いこそが大事と気づかされる。

 地方都市のよさも改めて感じるが、国が勧める地方移住(東京圏高齢化危機回避戦略)には整合性がなく、要は長期戦略の欠けた日本の姿ばかりが目につくのだ。(言視舎 1700円+税)

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