「歌丸ばなし」桂歌丸著

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 寄席で、客が勘が鋭ければその場で笑うが、鈍ければ家に帰ってから笑う。噺家(はなしか)は客を見極めながら枕を振るが、歌丸は仲のいい夫婦の噺「おすわどん」にこんな枕を振った。歌丸がお昼ご飯兼朝ご飯を食べていたら、かみさんが「晩のご飯のおかず何にする?」と聞く。めんどくさいから「なんでもいいよ」と言ったら、ほんとになんでもいいおかずが出てきて、猫もまたいでいった。

 その日かわした会話はそれだけだったので、「今はただ 飯食うだけの 夫婦かな」と一句ひねったら、かみさんは「今はただ 櫛の要らない 頭かな」と返した。

 軽妙な枕入りの「井戸の茶碗」「紺屋高尾」など8つの演目を収載した、くすりと笑える一冊。

 (ポプラ社 1200円+税)

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