「カネと共に去りぬ」久坂部羊著

公開日: 更新日:

 がん患者の真万(ママン)が多臓器不全で死んだ。主治医の村荘は医長に強制されて、霊安室から送りだされる真万の見送りに立ち会った。「お世話になりました」と言う真万の息子に何か言えと医長にせっつかれ、村荘は「……真万さんは、死んでよかったと思います」と言った。真万のがんは胃壁を突き破り膵臓の一部にも広がっていたが、臓器を広く切除すると手術で命を落としかねない。だが医長は手術を選んだ。そのまま延命治療を続けると黄疸になって悲惨な状況になると分かっていたが、医長はぎりぎりまで生かして現代医療の実力を試したかったのだ。(「医呆人」)

 外務省の医務官だった著者が、名作のパロディーで現代医療の嘘と欺瞞を突いた短編7編。

 (新潮社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本ハム新庄監督がドラフト会議出席に気乗りしないワケ…ソフトB小久保監督は欠席表明

  2. 2

    佐々木麟太郎をドラフト指名する日本プロ球団の勝算…メジャーの評価は“激辛”、セDH制採用も後押し

  3. 3

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  4. 4

    小嶋陽菜はブランド17億円売却後に“暴漢トラブル”も…アパレル売れまくりの経営手腕と気になる結婚観

  5. 5

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  1. 6

    ドラフト目玉投手・石垣元気はメジャーから好条件オファー届かず…第1希望は「日本ハム経由で米挑戦」

  2. 7

    今秋ドラフトは不作!1位指名の事前公表がわずか3球団どまりのウラ側

  3. 8

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  4. 9

    「仮面の忍者 赤影」で青影役 金子吉延さんは週5日の病院通いで「ダイジョーブ?」

  5. 10

    また日本中がブラック企業だらけになる…高市首相が案の定「労働時間規制」緩和指示の醜悪