【ニッポン人の働き方】働き方改革実行計画は実現するのか?

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「ムダな仕事が多い職場」太田肇著

 日本人の労働時間は長い。一昨年の統計で2024時間、独仏に比べて年に3カ月も長い。有給休暇の消化率も48・7%と半分以下。理由は2つ。1つは組織が個人の意欲や能力を引き出してない。2つ目が働き方の「ムダ」。本書は後者に焦点を当てた「ムダ排除」の働き方改革論。

 たとえば、行き過ぎた「お客さまは神様」主義はデパートの過剰包装からモンスタークレーマーにまで及ぶ。役所を攻撃するモンスターには元公務員が多いというのも皮肉だ。背景には「タテ社会のほうが楽だから」という日本の風土があるという。

「完璧主義」を掲げながら「小さなムダ」の排除にばかり血道を上げる本末転倒も多いと指摘。著者は経営学者だが、労働の制度よりニッポン文化論の色彩が強い。(筑摩書房 760円+税)



「5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人」熊谷徹著

 ドイツ在住27年の元NHK記者による日独働き方比較論。ドイツでは1日の労働は10時間が上限、6カ月平均では8時間を厳守せねばならない。有給休暇は年30日が普通で、新入社員でも取得可能。病欠は日本だと有給休暇から削るが、ドイツでは最長6週間の有給病欠が認められ、以後は公的医療保険で最長78週間まで7割分の病気手当が支払われる。なぜこんなにも違うのか。

 著者は雇い主への厳しい監視と罰則制度が生きているからだという。日本企業では社員と契約書を交わすのを「権利ばかり主張する社員が増える」と警戒するが、契約とは「互いの権利と義務」の明記が本来の趣旨だ。電通過労死事件はドイツでも大きく報じられ、「カロウシ」はフジヤマ、ゲイシャと並んで有名になった。日系企業は優秀なドイツ人社員を雇いにくくなっているという。

 ただし、著者も言うように、英仏米などはドイツほどでなく、英国人の有休実態は長くて1週間、米国人は同僚に仕事を取られるのを恐れて、なかなか休まないとも。面白いテーマゆえ、著者には数カ国の制度と実態を比較した新著を期待したい。(SBクリエイティブ 800円+税)

「検証 働き方改革」日本経済新聞社編

 政府肝いりの「働き方改革実行計画」。その内実をめぐる日経本紙連載をまとめたのが本書。

「同一労働同一賃金」は年功序列の弊害や正規・非正規の壁を打破する実力主義の実践。8年後には600万人の人手不足が懸念される労働市場では、「女性とシニア」が期待の星。毎年話題になる春闘のベア水準も非正規雇用が全体の4割、組合の組織率も17%という現状では「官製春闘」といわれても仕方ない。

 本当に人々の労働意欲を高めるにはどうするか。新聞連載だけに、本文のほか、コラムやインタビュー、独自調査など仕掛けに富み、小売業や中小企業を軸に多くの例を紹介している。(日本経済新聞出版社 1500円+税)

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