「父・横山やすし伝説」木村一八著

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 人気漫才コンビ「やす・きよ」の横山やすし(本名・木村雄二)が死去してから22年。長男の木村一八が、素顔の父親を語り下ろした。といっても、父親の浮気性な「暴れん坊」のせいで、家庭の事情は少々複雑。著者が父親と一緒に暮らしたのは10~14歳の間だけだという。

 一八少年の目に映った父親は、寂しがり屋で、根暗で、酒に弱い。家族を何よりも大事にし、暴力を振るうこともない。破天荒、乱暴、大酒飲みという世間のイメージとは違っている。それでも、やることなすこと、常識人とはかけ離れていた。

 木村家には独特の親父ルールがあった。たとえば、「自分を守るためのうそは、やむにやまれぬ殺人よりいかん」「2度目のルール違反は絶対に許さない」「お金がないなら、気ぃ使いぃ!」。子ども教育方針としては筋が通っているように見えるが、実際は矛盾だらけ。自分はうそをつくし、お金がなくても生活を変えない。「浮気は男の甲斐性」とばかり、息子を愛人に引き合わせる。ある日突然「飛行機を買いに行くぞ!」とアメリカに連れて行かれたり、ボートレース用のボートに乗せられたり。父親の愛を感じつつも、その言動に翻弄され、「なんじゃそりゃ!」と心の中で叫ぶ日々だった。

「やす・きよ」の元マネジャーや、2人の妹にも父の記憶を語ってもらい、自身の体験を肉付けしている。著者はいま48歳。風貌が父親に似てきている。かつて父親やすしは傷害事件を起こして謹慎、著者自身もまた傷害事件で少年院生活を送った。「男気」ゆえにこれまで話さなかった事件の真相も明かしている。

「親父は芸人として、破天荒で乱暴な物言いを演じていた。いや、なりきっていた。それは素顔の木村雄二とは違う」

 天才漫才師は、そのギャップに疲れたのか、飲めない酒に溺れ、51歳の若さで逝った。だが、その芸は、幾多の伝説とともに、漫才史に刻まれている。

(宝島社 1380円+税)

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