「さざなみのよる」木皿泉著

公開日: 更新日:

 がんで余命いくばくもない小国ナスミ、43歳。やがて彼女は静かな死を迎えるのだが、彼女の生きた証しは周りの人々の心の中で生きつづける。

 本書はそんなナスミの家族や知人たちが語る14のエピソードで構成される感動の短編集である。 ナスミの家のご近所で理髪店を夫とともに営む利恵。夫に具体的な不満があったわけでもないのに、ある日、家出を決意した利恵が駅のプラットホームに立つとそこにナスミの姿があった。彼女も家出をしようというところで、お互いの姿に思わず噴き出してしまう。そして、「今はね、私がもどれる場所でありたいの。誰かが、私にもどりたいって思ってくれるような、そんな人になりたいの」というナスミの言葉に後押しされて、利恵は家に戻る。(「第9話」)

 亡くなっても無くなるわけじゃない。命は宿り、去って、やがてまたやって来る――。

(河出書房新社 1400円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  2. 2

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  3. 3

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  4. 4

    今なら炎上だけじゃ収まらない…星野監督は正捕手・中村武志さんを日常的にボコボコに

  5. 5

    「高市早苗総裁」爆誕なら自民党は下野の可能性も…“党総裁=首相”とはならないワケ

  1. 6

    志村けんさん急逝から5年、更地になった豪邸の記憶…いしのようことの“逢瀬の日々”

  2. 7

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  3. 8

    広陵辞退騒動だけじゃない!「監督が子供を血だらけに」…熱戦の裏で飛び交った“怪文書”

  4. 9

    広陵野球部は“廃部”へ一直線…加害生徒が被害生徒側を名誉棄損で告訴の異常事態

  5. 10

    (3)阪神チーム改革のキモは「脱岡田」にあり…前監督との“暗闘”は就任直後に始まった