「SMILE 美しすぎる人類図鑑」近藤大真著

公開日: 更新日:

 笑顔ほど人との垣根を取り払い、通じ合わせてくれる最高の武器はない。そんな世界中の人々の笑顔を集めた写真集。

 大学生のときに、写真家になろうと決意して絶景を撮る旅に出た著者だが、どんな絶景よりも、旅先での人との出会いが心に残っていることに気づき、「出会った人の写真を撮ろう。どうせ撮るならとびっきりの笑顔を」と決め、ヒッチハイクで日本一周をしながら笑顔を撮る旅に出る。写真は旅先で世話になった人への「恩返し」だと思うようになった著者は、今度は無期限・無計画で世界一周への旅に出る。本書には、1年半、33カ国に及んだその旅で出会った人々の笑顔を収める。

 片道4日間かけてたどりついたエチオピアの「世界一おしゃれ」といわれる少数民族スリ族の村の人々、人生の年輪を感じさせるインドのおじいさんのほほ笑み、ガハハハッと豪快に笑うペルーのおばちゃん店員、赤ん坊を抱いた幸せそうなスペインのカップル、ミシンに向かいながら笑みを絶やさぬジョージアの工員、陽気にポーズを決めるミャンマーの漁師、そして各国の路上で一緒に遊んだ子どもたちのはじけるような笑顔まで。

 話す言葉も暮らしぶりも何もかもが異なる国の老若男女のポートレートだが、やっぱり笑顔は世界共通の言語だと実感させてくれる。

 各人とのエピソードはほとんど紹介されていないが、笑顔に魅せられ、写真に見入っていると、その場の会話ややりとりまでもが浮かんでくる。

 バイクの事故で前歯が3本も折れたり、1カ月間も下痢が止まらなかったり、資金が尽きて野宿生活になったりと、大変なときも、笑っているうちに大抵のことはどうでもよくなったと著者は言う。

 笑顔の連鎖が元気とパワーをくれるお薦め本。

 (大和書房 2000円+税)


【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「ばけばけ」好演で株を上げた北川景子と“結婚”で失速気味の「ブギウギ」趣里の明暗クッキリ

  2. 2

    西武・今井達也「今オフは何が何でもメジャーへ」…シーズン中からダダ洩れていた本音

  3. 3

    N党・立花孝志容疑者にくすぶる深刻メンタル問題…日頃から不調公言、送検でも異様なハイテンション

  4. 4

    我が専大松戸は来春センバツへ…「入念な準備」が結果的に“横浜撃破”に繋がった

  5. 5

    N党・立花孝志氏に迫る「自己破産」…元兵庫県議への名誉毀損容疑で逮捕送検、巨額の借金で深刻金欠

  1. 6

    高市首相「議員定数削減は困難」の茶番…自維連立の薄汚い思惑が早くも露呈

  2. 7

    高市内閣は早期解散を封印? 高支持率でも“自民離れ”が止まらない!葛飾区議選で7人落選の大打撃

  3. 8

    高市政権の物価高対策はパクリばかりで“オリジナル”ゼロ…今さら「デフレ脱却宣言目指す」のア然

  4. 9

    高市首相は自民党にはハキハキ、共産、れいわには棒読み…相手で態度を変える人間ほど信用できないものはない

  5. 10

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗