「暗殺者の潜入」(上・下) マーク・グリーニー著、伏見威蕃訳

公開日: 更新日:

 長く続いているシリーズの新作だが、以前の作品を未読でも大丈夫なので、安心して手に取られたい。内容が続いているわけではないのだ。

 主人公のグレイマンが、今回は内戦下のシリアに潜入する。ある依頼を受けたからだが、それがどんな依頼なのかは、ここに書かないでおく。内戦下のシリアに潜入する、というだけでもその困難が容易に想像できるというものだ。

 まず、政府正規軍に、政府寄りの私兵団がいくつもある。対する反政府勢力にもさまざまな組織があり、たとえば自由シリア軍に、シリア民主軍。後者はISIS打倒を掲げる反体制組織だ。他にも、シリアのスンニ派を中心とする反シリア政府組織で「シリアのアルカイダ」と呼ばれていたアルヌスラ戦線(数年前にアルカイダからの離脱を発表)、さらには石油ルートや密輸ルートを奪い合うギャング組織もいれば、イランやロシアもシリアに派兵したりして、もうぐちゃぐちゃである。誰が敵で、誰が味方なのか、皆目わからない混沌のただ中に、グレイマンは飛び込んでいくのである。相変わらずアクションも快調で、読み始めたらやめられない。

 冒険アクション小説は最近めっきり少なくなり、その手の作品が好きな読者は寂しい思いをしているが、グリーニーがいれば大丈夫。迫力満点のアクションを今回もまた、たっぷりと堪能されたい。 (早川書房 各860円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  3. 3

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    巨人大ピンチ! 有原航平争奪戦は苦戦必至で投手補強「全敗」危機

  1. 6

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 7

    衝撃の新事実!「公文書に佐川氏のメールはない」と財務省が赤木雅子さんに説明

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    高市首相が漫画セリフ引用し《いいから黙って全部俺に投資しろ!》 金融会合での“進撃のサナエ”に海外ドン引き

  5. 10

    日本ハムはシブチン球団から完全脱却!エスコン移転でカネも勝利もフトコロに…契約更改は大盤振る舞い連発