「書店人のはんせい」人見廣史著
書店人として44年間勤めた著者によるエッセー。本から得られる幸福感や新しい世界との遭遇、さらには本が出来る現場まで、本がもたらす楽しさが伝わってくる。
(新評論 2000円+税)
■数珠つなぎに湧く興味
著者は44年間にわたって「あるモノ」を売り続けてきた。自身の半生を振り返りながら、あるモノの素晴らしさと楽しさ、有益さを語っていく。
あるモノとは、いったい何か。まず、何よりもあるモノを楽しむには、自分の意志が働かなければいけない。時間を割いて習慣化することで、知らなかった世界が目の前に広がる。この瞬間を「しあわせ! という言葉しか出てこない」と表現する。
逆に、自身を見つめ直す機会も与えてくれる。刺激を受け、励まされ、生きる力をもらえることもあれば、子や孫に伝えていきたいと強く思わせるモノでもあるようだ。
著者自身の、あるモノに影響された経験は実に多岐にわたり、まるで樹系図のような広がりを見せる。買って終わり、ではない。そこから数珠つなぎに興味が湧くという。
また、あるモノの製造現場へも足を運び、作業工程を見学。こだわりの職人技と、多くの人の思いを目の当たりにして、改めて感動したそうだ。
最近では、著者と同業者が脚光を浴びているという。もうおわかりだろうか。開いて、味わい、そして閉じる、アレだ。