日本学術会議の法人化は“戦争への第一歩”だ…軍事目的の研究を否定した設立趣旨前文を全削除の愚行
「国の特別の機関」とされている現在の日本学術会議法を廃止し、国から独立した法人格を有する特殊法人として新たに設置する日本学術会議法案が衆院を通過した。
政府は「学術会議の機能強化のために、独立性・自律性を抜本的に高めることが目的だ」といかにも科学が政治から独立して物が言えるようになるみたいに言っているが、これが実は全然逆の話なのだ。実際には政府が任命するいくつもの委員会や、財源を提供する第三者に縛られて「学問の自由」は極端に抑えられてしまう仕組みになっている。
そもそも学術会議は、戦前の日本が学術を政治に従属させ、学術の側も戦争遂行に加担する役割を果たしたとの反省のうえに、「学問の自由」を保障する日本国憲法を具体化するという目的で始まった。これまでの日本学術会議法は、その前文で「科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命」とするという設立趣旨をうたっている。ところが新法案ではこの前文はまるごと削除されているのだ。つまり戦争に踏み込みそうになる政府に歯止めをかける役割も担ってきたものを、骨抜きにされてしまうのだ。