「30センチの冒険」三崎亜記著

公開日: 更新日:

 ユーリは実家に戻るためにバスに乗ったが、寝過ごして終点まで行ってしまった。何かのついでに来たはずなのに本来の目的が思い出せない。バッグの中に30センチのものさしと水色の本が入っていた。歩いて戻ろうとすると、闇のなかで何かがやってきてユーリを包み込んだ。「助けてくれ!」と叫ぶと、「つかまって!」という声がする。ものさしをその声の方に差し出すと、それを掴んだ女性が覆いかぶさってユーリを守ってくれた。

 彼が迷いこんだのは、隣の建物が遠くに見え、彼方の建物が異様に近く見える「遠近」という概念が破壊された世界だった。だがユーリには、元の世界に、ゼッタイに会いに行くから! と約束した人がいた。

 異界に迷いこんだ青年の物語。

(文藝春秋 1850円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  2. 2

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  3. 3

    元日本代表主将DF吉田麻也に来季J1復帰の長崎移籍説!出場機会確保で2026年W杯参戦の青写真

  4. 4

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  5. 5

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 7

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 8

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾