著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「雑誌に育てられた少年」亀和田武著

公開日: 更新日:

 コラムニスト、亀和田武のバラエティーブックである。

 亀和田武の雑文集は「1963年のルイジアナ・ママ」(1983年)、「ホンコンフラワーの博物誌」(87年)に続いて3冊目だが、今回は高校2年生のときに書いた書評から、69歳のときに書いたエッセーまで、なんと50年間の雑文集大成なので読みごたえがある。

 なにしろ内容が多岐にわたっているのだ。SF、プロレス、ジャズ、映画、ポルノ、劇画、喫茶店、雑誌、文学、テレビ、街――とありとあらゆるものが対象になっている。著者の好奇心が全方位に爆発していると言っていい。小説宝石に連載中のエッセー「夢でまた逢えたら」でいつも驚かされるのは著者の記憶力で、よくもまあこんな細かなことを覚えているものだと感心するが、本書も例外ではない。この50年間のカルチャーシーンのすべてがここにある、と言っても過言ではない。

 香港の映画監督ウォン・カーウァイを論じたエッセーを読むと、無性に彼の映画を見たくなるし、渋谷のジャズ喫茶の変化を語るエッセーを読むと、ブラッドベリの短編「霧笛」を読みたくなる(どうしてなのかは、滋味あふれるエッセー「最後の恐竜と渋谷の路地について」を読まれたい)。

 自販機雑誌の編集者時代を描いた「小説ザ・ポルノグラファー」と、「ラリー・フリントになりたかった」もいい。

 (左右社 2750円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “芸能界のドン”逝去で変わりゆく業界勢力図…取り巻きや御用マスコミが消えた後に現れるモノ

  2. 2

    落合博満さんと初キャンプでまさかの相部屋、すこぶる憂鬱だった1カ月間の一部始終

  3. 3

    渡辺謙63歳で「ケイダッシュ」退社→独り立ちの背景と21歳年下女性との再々婚

  4. 4

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  5. 5

    米価高騰「流通悪玉論」は真っ赤なウソだった! コメ不足を招いた農水省“見込み違い”の大罪

  1. 6

    大阪万博は鉄道もバスも激混みでウンザリ…会場の夢洲から安治川口駅まで、8キロを歩いてみた

  2. 7

    悠仁さま「9.6成年式」…第1子出産の眞子さん、小室圭さんの里帰りだけでない“秋篠宮家の憂鬱”

  3. 8

    参政党議員「初登院」に漂った異様な雰囲気…さや氏「核武装」に対しゼロ回答で現場は大混乱

  4. 9

    ダルビッシュの根底にある不屈の反骨精神 “強いチームで勝ちたい大谷”との決定的な違い

  5. 10

    悠仁さま「友人とガスト」でリア充の一方…警備の心配とお妃候補との出会いへのプレッシャー