「逃げ出せなかった君へ」 安藤祐介著
大友が就職したのは、投資用マンションの営業をするブラック企業だった。昼間は電話営業、深夜と早朝は民家に飛び込み営業をしなくてはならず、同期の夏野と村沢も疲れきっていた。夏野は「ここで3年頑張れたら無敵になれる」と言ったが、投資説明会で過労から気を失ったとき、上司に殴られた大友は、耐えきれず辞表を出す。
翌日、夏野からメールがきた。ピアノの得意な夏野はネットに「ピアノマンの6畳間」という動画を投稿していたが、その日はうつろな目をした夏野がミスタッチだらけの「てるてる坊主」を演奏していた。大友は、友人が自殺を図っていると110番し、夏野のアパートに向かうが……。
ブラック企業に入ってもがく男を描く6編の短編。
(KADOKAWA 1600円+税)