「県民には買うものがある」笹井都和古著
「私」とヒロミちゃんは高校3年生。受験を終えて、若さを持て余したような漠然とした後悔が押し寄せていた。男を知らないことだけで、自分だけ画素の粗い世界にいるような、まごつきの中にいる。
2カ月前、SNSの「滋賀県コミュニティ」で知り合った林田くんは、生まれてから25年間、滋賀で育って干からびきっている。今日も彼の車で湖岸道路から琵琶湖大橋方面に行き、ラブホテル街に流れ込むという滋賀中のカップルのお決まりのルートをなぞることになるだろう。滋賀ではミニシアター系の映画が好きな男より、車を持っている男のほうが強いのだ。(表題作)
自分の環境に欠けている何かを満たそうともがく青春を描いた短編5編。
(新潮社 1400円+税)