「『うつ』は食べ物が原因だった!」溝口徹著

公開日: 更新日:

 薬を飲んでも、カウンセリングを受けても、簡単には快方に向かわない「うつ」。個々のストレス耐性や性格の影響もあるが、実はうつの95%には食べ物、すなわち栄養が関わっているという。

 栄養療法専門クリニックを開設し、4000人のうつ病を改善してきた著者。体内の栄養素を最適濃度にすることで細胞の機能を向上させる「オーソモレキュラー(分子整合栄養医学)療法」では、うつを引き起こす最大の原因を脳の栄養不足と考えるのだという。

 皮膚や髪など体をつくる重要な成分はタンパク質だが、ドーパミンやセロトニンなどの脳内神経伝達物質の原料もタンパク質だ。つまり、肉や魚、大豆製品などを十分に取っていないと、神経伝達物質が不足して集中力の低下や気分の落ち込み、不眠などにつながり、うつのリスクが高まってしまう。

 タンパク質を十分に取っていても、神経伝達物質の合成がうまくいかない場合もある。その要因はビタミンB群の不足だ。タンパク質が神経伝達物質に作り変えられるとき、補酵素としてビタミンB群が欠かせない。もっとも消費されるのが、レバーやにんにく、バナナに豊富なビタミンB6。アルコールやカフェイン、たばこ、そして薬の服用でも消費されるため、意識して摂取しなければならない。

 他にも、長引くストレスが脳の海馬の炎症反応につながり、うつを招くことも分かってきた。ストレスをなくすことは大切だが、同時に抗炎症作用の高い栄養も取りたい。著者が勧めるのは、オメガ3系脂肪酸。エゴマ油や亜麻仁油の他、アジやサバなどの青魚にも豊富だ。

 体は食べ物によって作られる。うつ改善のヒントも栄養にあると心得よう。

(青春出版社 950円+税)

【連載】長生きする読書術

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する