「鉄の楽園」楡周平著

公開日: 更新日:

 北海道にある鉄道の専門学校、海東学園は道内鉄道の赤字、少子化のあおりを受け深刻な経営危機に陥っていた。そこへ同学園を買収してリゾート地として開発したいという中国企業が現れた。

 一方、総合商社の四葉商事は東南アジアの新興国、R国の高速鉄道受注をめぐって資金力豊かな中国を相手に苦戦を強いられていたが、同国の有力財閥の令嬢で貧困層の子供の教育支援に尽力してきたキャサリン・チャンが次期首相選に立候補するとの情報を得る。四葉商事の現地責任者で海東学園創業者の息子でもある相川翔平は早速キャサリンに接触し、首相選出馬の最大の目的は貧困格差の是正であり、それを可能にするのは教育だという彼女の考えを知る。

 また経産省でもR国の高速鉄道導入に関して独自の調査を進めていた。中国に勝つにはキャサリンの意向に沿う新たな提案をするしかないと、海東学園、四葉商事、経産省の3つがタッグを組み、前代未聞のプロジェクトが立ち上がる……。

 既存の高い専門技術と日本独自の接客、清掃などの高い職業意識の組み合わせ――未来の日本の可能性を新たな視点から問い返す、痛快な企業小説。

 (新潮社 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  3. 3

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  4. 4

    最後はホテル勤務…事故死の奥大介さん“辛酸”舐めた引退後

  5. 5

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    名古屋主婦殺人事件「最大のナゾ」 26年間に5000人も聴取…なぜ愛知県警は容疑者の女を疑わなかったのか

  3. 8

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 9

    高市内閣支持率8割に立憲民主党は打つ手なし…いま解散されたら木っ端みじん

  5. 10

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘