「釣りの名著50冊」世良康著
桂歌丸は新宿末広亭の夜の部の高座が入っていたが、兄弟子の3代目三遊亭円右から、大事な用ができたから昼の部と代わってくれと頼まれた。
兄弟子だからむげには断れない。だが歌丸には、その日の昼に高座より大事な用事があった。
丁重に断ると、仕方なく円右は別の者に代演を頼んだ。
当日、歌丸は相模湖に舟を浮かべてワカサギを釣っていた。すると、向こうから見たような顔の人が舟でやって来る。円右だった。2人は笑い話で終わったが、末広亭の席亭にバレて大目玉をくらった。(桂歌丸「岩魚の休日」)
他に、夢枕獏「大江戸釣客伝」、伊集院静「チヌの月」など、釣りキチたちの“水辺の哲学”が詰まっている一冊。
(つり人社 1600円+税)