「外資系オタク秘書 ハセガワノブコの華麗なる日常」泉ハナ著

公開日: 更新日:

 近年、働き方を考える際に重視されるようになったのはワークライフバランス(仕事と生活の調和)だ。内閣府の調査によると、2011年の「仕事よりも家庭(プライベート)を優先する」52・9%、「家庭(プライベート)よりも仕事を優先」17・1%が、17年には、それぞれ63・7%、12・7%に変化している。
 家庭・プライベートを優先しつつ仕事も充実させていくというのは、なかなかに至難の業だが、本書の主人公はそれを上手にこなしている。ただし、彼女のプライベートとは筋金入りのオタクなのだ。
【あらすじ】外資系銀行秘書のハセガワノブコは32歳、独身。中学1年のときに商社マンの父親がニューヨークへ転勤となりアメリカに行くことになるが、ノブコはそれにひどく抵抗する。
 というのは朝から晩までアニメとゲームに漬かるオタク生活を満喫していたノブコにとってアメリカはオタク文化の僻地だからだ。それでもアメリカでは懸命に勉強して名門大学を卒業。ようやく日本に戻ることができたノブコはオタク生活を満喫するため、選んだのが外資系金融エグゼクティブ秘書だった。
 会社では有能な秘書だが、オタク腐女子にとって一般人にその正体がばれるのはご法度。上司にも同僚たちにも秘密のまま仕事をこなしていたが、アメリカ留学中に超セレブと知り合い、学歴も高いノブコは同僚から嫉妬され、思わぬ事態を招くことに……。
【読みどころ】外資系企業の独特な雰囲気の中でさっそうと働く姿と、自宅で超絶なるオタクぶりを発揮するそのギャップ! そして、そこここに登場するオタクたちの異次元の世界に興味津々。お仕事&オタク小説の幸福な融合だ。(祥伝社 640円+税)
 <石>

【連載】文庫で読む傑作お仕事小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志氏はパチプロ時代の正義感どこへ…兵庫県知事選を巡る公選法違反疑惑で“キワモノ”扱い

  2. 2

    タラレバ吉高の髪型人気で…“永野ヘア女子”急増の珍現象

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    《#兵庫県恥ずかしい》斎藤元彦知事を巡り地方議員らが出しゃばり…本人不在の"暴走"に県民うんざり

  1. 6

    シーズン中“2度目の現役ドラフト”実施に現実味…トライアウトは形骸化し今年限りで廃止案

  2. 7

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    大量にスタッフ辞め…長渕剛「10万人富士山ライブ」の後始末

  5. 10

    立花孝志氏の立件あるか?兵庫県知事選での斎藤元彦氏応援は「公選法違反の恐れアリ」と総務相答弁