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「近未来戦を決する『マルチドメイン作戦』」日本安全保障戦略研究所編著

 米中対決が鮮明になるにつれ日中間の緊張も急増している。はたして「近未来の戦争」はどうなるのか。



 米大統領選のゆくえはまったくわからなくなってきたが、トランプとバイデンのどちらが勝っても対中強硬姿勢は変わりがないという。かつては民主党が融和的だったが、いまや情勢は一変。しかしそれは中国の対日姿勢にも影響する。要は日中間の軍事的緊張に備えよ、というのが安全保障関係者の声なのだ。

 本書のいう「マルチドメイン」とは「多領域」の意味。従来の陸海空の防衛に加え、尖閣列島や南シナ海のような長期化するグレーゾーンの存在や、宇宙、サイバー、電磁波などまったく新しいタイプの領域における安全保障を考えないといけないのが現代だ。

 本書は防衛省、自衛隊の元幹部がずらりと顔をそろえ、露・中・米それぞれのマルチドメイン作戦の概要を紹介。また日本の「多次元統合防衛力」構想と独自の「横断領域(クロスドメイン)作戦」について専門的に解説する。特に中国では「マルチドメイン作戦」とはいわず、代わりに「情報化戦争」の概念を使う。戦場での不確定性をできるだけ排除すると同時に、相手を計略によって陥れて「戦わずに勝つ」孫子の兵法を現代に活用するという。

(国書刊行会 2700円+税)

「現代戦争論 ―超『超限戦』」渡部悦和、佐々木孝博著

 元陸将と元海将補の2人がそろって解説するのは「超限戦」。1999年に中国人民解放軍の現役大佐2人が共同執筆した本の題名だが、もとをたどるとマキャベリの「君主論」と中国の古典「韓非子」にいきつく。

「人間不信の哲学」ともいわれる「韓非子」。それをベースにした「超限戦」とは「目的のためには手段を選ばない。制限を加えず、あらゆる可能な手段を採用して目的を達成する」ことを本質とする概念だという。

 つまり人権や生命の重視などを度外視し、軍事と非軍事、正規と非正規、国際法などの境界を超越する戦いだというのだ。

 中国発のウイルスが世界に一気に広まったときに中国の陰謀ではないかといわれたのもそのためだ。また中国は、自国が感染源であるにもかかわらず、ウイルスとの戦いの先陣を切ったと主張。世界は中国に感謝すべきだとも主張した。

 本書はロシアの米大統領選への介入問題などにも触れて機敏な議論を展開している。

(ワニブックス 1200円+税)

「先端技術と米中戦略競争」布施哲著

 グローバル化で全体が一体化したとされたが、近頃は「デカップリング」論がさかん。米中関係が緊張するにつれ、一部の経済分野と他を分離(デカップル)し、IT製品のほか、コロナ対応の医薬品などのサプライチェーンを除き、他は相互依存関係をやめようというのだ。最近の中国スマホメーカー、ファーウェイ排除の動きはその典型。動画アプリのティックトックまで禁止する動きになった。

 本書はこうした現状をふまえ、中国に対するアメリカの怒りと危機感、そして技術への自信を交差させた新しい戦争の技術について、テレビ朝日の防衛担当記者が解説する。

 中国の最新兵器のカラー写真が豊富で、類書になる持ち味になっている。

(秀和システム 2400円+税)

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