「失われゆく仕事の図鑑」永井良和、高野光平ほか著

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 数年前、AIや機械によって代替され、人類の仕事の約半分が間もなく消滅するという予測が出て、世間を騒がせた。技術革新によって、昭和、平成、そして令和へと時代が進むにつれて私たちの生活は格段に便利に、快適になった。

 一方で、人々はその暮らしを維持するために多くの時間を仕事に費やしながら、その仕事に意味を見いだせずにいる人も多い。

 本書は、時代の変遷とともに消えてしまった、または消えつつあるが、かつてこの国に確かに存在した仕事や暮らしぶりを紹介する図鑑。

 例えば「氷屋」さん。近年、流行のかき氷屋さんではない。各家庭を回り、リヤカーに積み込んだ大きな氷塊をその軒先でのこぎりで切り分けて配達してくれる商売だ。家庭用の「電気」冷蔵庫がまだない時代、木とブリキでできた箱の2階部分に氷を入れて1階部分の食材を保冷する「氷冷式」冷蔵庫が主流だったのだ。その氷を定期的に家まで配達してくれるのが氷屋さんだ。

 また水洗トイレが普及する以前の「汲み取り式便所」は、たまったし尿の処理が不可欠。「汲み取り人」と呼ばれる職業の人たちが長い柄の付いた柄杓で便槽から、し尿を汲み取り、肥桶に移し替え、リヤカーに載せて持ち去った。集めたし尿は、近隣農村に運ばれ肥料にされた。

 この仕組みは江戸時代に始まったが、化学肥料の登場などで集められたし尿は次第に海洋投棄されるようになったという。やがて汲み取りは、人力からバキュームカーにとって代わり、東京では1960年には完全移行した。

 夜の銀座で花を売り歩く「花売り娘」(表紙)もいた。1952年の調査では、界隈には毎夜200~300人ほどの花売り娘がいて、現在では到底考えられないが、その多くは10代前半、最年少は6歳だったという。客は買った花を行きつけのバーやスナックのママにプレゼントすることが多かったらしい。

 写真やイラスト、そして著者らの個人的な思い出なども盛り込みながら当時の様子を伝える。ある年代には、いつの間にか消えてしまった、そんな仕事や、仕事をする人々の光景が懐かしく、また若い世代には別世界の出来事のように感じることだろう。

 バス内で発券や検札を担った「バスガール」(バスの車掌)や、ギター片手に繁華街で酔客の求めに応じて伴奏をしたり歌を聴かせる「流し」、穴の開いた鍋やヤカンを修理してくれる「鋳掛屋」、銭湯で追加料金を払った客の背中を流してくれる「三助」など。121もの失われた、もしくは失われゆく仕事、さらにコンドームの自動販売機のような「機械」や、“見世物小屋”のような「場所」なども取り上げる。

 単にノスタルジーに浸るだけでなく、「ああ、そんな暮らしや仕事があったんだ」と自分の仕事や暮らし方、そして生き方までをも見つめ直すきっかけをくれるお勧め本。

(グラフィック社 2000円+税)

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