「犬と歩けばワンダフル」北尾トロ著

公開日: 更新日:

 御年70歳の舟木孝美さんは現役のベテラン猟師。猟犬と一緒に山に入り、ひとりで獲物を狙うスタイルだが、とにかく猟犬へのこだわりと愛情がハンパない。多くの猟師にとって犬はサポート役だが、舟木さんは「猟犬ファースト」。猟犬の持つ能力を存分に引き出して獲物を仕留めることが第一だ。そんな姿に、著者は密かに「猟犬猟師」と名付ける。

 2月のある日、舟木家の4頭のうち猟にお供したのは紀州犬の血が濃いアンズ(メス)とブラ(オス)。リードを離すと2頭はすっ飛んでいくが、付近に獲物がいなければ戻ってくる。次の猟場でも気配がないと判断すれば引き返してくるのだ。その能力を目の当たりにして著者は驚く――。

 自身も狩猟免許を持つ著者が、2年にわたり信州に暮らすベテラン猟師と猟犬を密着取材した猟犬ドキュメント。猟犬に対する好奇心からスタートした取材は、やがて犬を使った狩猟が成立するのは、人間と犬との関係性があるからだと気づく。ひとつのチームとして獲物に向かい、犬は猟師を喜ばせることが自分の喜びとなるのだ。

 取材2年目にはアンズとブラの子ども2頭も猟場デビュー。親犬から学んでいく様子や、猟犬訓練所など知られざる狩猟と猟犬の世界を臨場感たっぷりに伝える。個性豊かな6頭の写真も豊富。 (集英社 1760円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

  2. 2
    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

  3. 3
    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

  4. 4
    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

  5. 5
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

  1. 6
    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

  2. 7
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 8
    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

  4. 9
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異