「丸い地球のどこかの曲がり角で」ローレン・グロフ著 光野多惠子訳

公開日: 更新日:

 夫婦生活を夫と妻の別々の視点から描いた長編「運命と復讐」が、オバマ元大統領に絶賛されて一躍世界中の文壇から注目を浴びた著者による短編小説集。表題作は爬虫(はちゅう)類好きの父とそんな父から逃れて本屋を営む母との間を行き来した少年ジュードの物語だ。

 爬虫類のすむ沼のほとりのクラッカーハウスで生まれたジュードは、父が持ち込む蛇と共に育った。母親は家の湿気と絶えず侵入してくる蛇に疲れ果て、父親が持ち込んだ蛇を殺してジュードを連れて家を出たものの、家に連れ戻されてしまう。再度家を出ようとした母親はジュードを父親に奪われ、ジュードは父親とふたりだけの生活を始めることになるのだが……。太陽が降り注ぐ土地というイメージで語られがちなフロリダを舞台に、その明るさの陰にうごめく闇の部分を描写している。ほかにも息子の巣立ちを予感する母親の物語「亡霊たちと抜け殻たち」、奨学金の受給停止を機に路上生活者に転落した女子大学院生を描いた「天国と地獄」、避難勧告時に家に居座る女性を幽霊が訪ねてくる「ハリケーンの目」など、計11編が収録されている。

(河出書房新社 3300円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅宮アンナ「10日婚」短期間で"また"深い関係に…「だから騙される」父・辰夫さんが語っていた恋愛癖

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(19) 神話レベルの女性遍歴、「機関銃の弾のように女性が飛んできて抱きつかれた」

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  4. 4

    山本舞香は“ヤンキー”より“令嬢”がハマる?「波うららかに、めおと日和」《ふかふみコンビ》で人気急上昇

  5. 5

    元横綱白鵬 退職決定で気になる「3つの疑問」…不可解な時期、憎き照ノ富士、親方衆も首を捻る今後

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  2. 7

    中川翔子「Switch2転売購入疑惑」を否定も火に油…過去の海賊版グッズ着用報道、ダブスタ癖もアダに

  3. 8

    横浜流星「べらぼう」ついに8%台に下落のナゼ…評価は高いのに視聴率が伴わないNHK大河のジレンマ

  4. 9

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る