「臨床の砦」夏川草介著

公開日: 更新日:

 夕刻の発熱外来に「いや、それは無理ですよ。うちだってもう限界なんですから」という声が響いた。信濃山病院は地域で唯一の感染症指定医療機関だが、病床は200床未満で、呼吸器や感染症の専門家はいない。保健所の要請に、検査はできるが入院は無理だと医師が答える。

 カラオケ店でクラスターが発生。40度を超える熱で苦しんでいるというので、やむなく2人を受け入れることに。コロナの感染者は増え続け、死者は56人になった。病院は既に医療崩壊状態なのに、政府は「緊急事態宣言発出を検討中」と言うだけだ。内科医の敷島寬治は、医師の精神はそろそろ限界に近くなっていると憂慮する。

 命がけでコロナに立ち向かう医療現場を描くドキュメント小説。

(小学館 1650円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る