「小説 透明なゆりかご」(上・下)橘もも著/沖田×華原作、安達奈緒子脚本

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 本書の主人公が勤め先の産婦人科の院長に1990年代の日本の3大死亡要因は何かと問われ、1位悪性新生物(がん)、2位脳血管疾患、3位心疾患と答える。学校なら正解だが、ここでは不正解だと言われる。答えは人工妊娠中絶による「死」だ。主人公が挙げた90年代における3大要因の各死者数が11万~29万人なのに対し、同じ時期の中絶件数は33万~43万。日本の中絶件数は、49年の母体保護法成立以後、50年代の年間100万件をピークに年々減少し、現在は15万6000余件。そこには数字では捉えきれない、さまざまなドラマが宿っている。

【あらすじ】青田アオイは看護学科の高校生。実習を兼ねて近くにある由比産婦人科でアルバイトを始めた。

 その初日に聞かれたのが先の死亡要因についてだ。アオイが最初に立ち会ったのも、新しい生命を生み出すはずの分娩台での中絶手術だった。アオイはいきなり接した重い事実を前に戸惑うが、いつも冷静に患者の気持ちに寄り添う院長や先輩看護師たちに励まされながらいろいろな人たちの人生に向き合っていく。

 時には、何の問題もなくお産を終えた母親が、その数時間後に死んでしまう。医療技術が発達した今でも産科の現場ではそうしたリスクと常に隣り合わせであることを思い知る。また注意欠陥・多動性障害(ADHD)で幼い頃から母親との間がギクシャクしていたアオイが、出産というドラマに向き合うことで母親との関係をいかに修復していくかも重要な要素となっている。

【読みどころ】新しく始まったNHKの朝ドラのヒロインとなった清原果耶が主演して評判となったテレビドラマのノベライズ。ドラマとはまた別の静かな感動を呼び起こす秀作。 <石>

(講談社上704円 下726円)

【連載】文庫で読む 医療小説

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