「プリズン・ドクター」岩井圭也著

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 矯正医官とは、刑務所、少年鑑別所などの矯正施設で勤務する医者の名称。週休2日で基本的に残業はなしと、過度の残業を強いられる勤務医に比べれば恵まれているようだが、常勤の矯正医官は不足しており定員割れが続いている。

 そこで法務省は「矯正医官修学資金貸与制度」を設けた。医学部の3学年以上を対象に月額15万円の資金を貸与し、研修後3年間矯正医官として勤務すれば返還が免除される。本書の主人公もこの制度を利用した矯正医官だ。

【あらすじ】是永史郎は幼い頃に父親が家を出て、以後母親の手で育てられた。その母が認知症となったため認知症の専門医になろうと思っていたが、母の医療費を考えると矯正医官になって奨学金を免除してもらう必要があった。

 勤務先は北海道の千歳刑務所。受刑者は高齢化しており、ひっきりなしに患者が訪れる。ハイになるための医薬品を手に入れるための詐病も多いのも特徴。ある受刑者が原因不明の痛みを訴え痛み止めを要求する。ベテランの保健助手は詐病だというが、史郎はその訴えをウソとは思えず、入念に調べると非常に見つけづらい難病であったことが判明。また、ある受刑者の死をめぐって自殺か他殺かを短時間で特定しなくてはならず、史郎はあらゆる手を尽くして原因を見事解明する。

 当初はキャリアにならない矯正医官は奨学金を返すまでの腰掛けにすぎないと思っていた史郎だが、受刑者たちと向き合っているうちにこの仕事にやりがいを見いだしていく――。

【読みどころ】サイドストーリーとして、認知症がひどくなっていく母親との確執と別れた父親との刑務所での対面という家族問題があり、若き医者の内面に奥行きをもたせている。 <石>

(幻冬舎790円+税)

【連載】文庫で読む 医療小説

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