「本物をまなぶ学校自由学園」婦人之友社編集部編

公開日: 更新日:

 1921年、ジャーナリストであった羽仁もと子、吉一夫妻によって創設された自由学園。わずか26人の女子中学生から始まった学びやはその後、東京・池袋から西郊・ひばりケ丘へと移転し、幼稚園から最高学部(大学)まで一貫教育の学びの場となった。

 本書は今年創立100周年を迎えた学園をさまざまな視点から捉え、理念とその試みをひもといた一冊。

 10万平方メートルもある自然豊かなキャンパスで学ぶ生徒たちは、学内での日々の生活を自治自労で行う。机と椅子は自分たちで作り、昼食も自分たちで育てた野菜や養豚を使い、男女とも当番制で作る。中等科からは寮生活が始まり、その運営も生徒が担うという。大がかりな行事の企画、ボランティア、清掃、樹木の世話に至るまで生徒たちの自治が尊重される。在校生や卒業生の声からは、生徒たちが理屈抜きに自由の裏側にある責任と向き合っていくさまが浮かび上がってくる。

 授業も既存の学校教育の枠にはとどまらない。生徒の発案で、SNSの誹謗(ひぼう)中傷について考え、野菜作りを始めた生徒を中心に種子法改正について考える。本物に触れ、生活のすべてを学びとするユニークな教育は、まさに「生きていく力」を身に付ける教育であることが分かる。

 内田樹、福岡伸一、坂本龍一らの特別寄稿、広大なキャンパスの写真も掲載。

(婦人之友社 1650円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」