「ナラの世界へ」ディーン・ニコルソン著 山名弓子訳

公開日: 更新日:

 愛猫家にとっては憧れの物語である。本書は世の定説「猫との旅はムリ」を、ひょんなことから覆した日々をつづるノンフィクション。

 2018年9月、変化のない日常を変えようと、自転車で世界に飛び出したスコットランド在住のディーンは、その3カ月後、ボスニア・ヘルツェゴビナに到着。山岳地帯を走っているとき、生後数週間の子猫を発見する。人影はなく、間もなく雪も降りそうだ。ディーンは迷った末、子猫を「ナラ」と名付けて一緒に旅をすることを決意。このことがディーンの人生を大きく変えていく。

 時には荷物にナラを隠し、時にはさまざまな猫用書類と格闘し、猫用パスポートを得て国境を越えていく。子猫のナラは体調を崩すこともしばしばで、そのたびにディーンは落ち込み、獣医師の元に走る。気楽な一人旅は、ナラという相棒が現れたことでどんどん予定がずれていった。

 ところが愛らしいナラによって、ひげ面大男のディーンは多くの人々との交流を可能にし、またフロントバッグに入り自転車旅を楽しむナラの姿は、SNSを通して世界中の人を魅了していく。やがてディーンは旅をする中で見知った捨て犬や猫、動物の保護活動家たちとの交流から、自分のなすべきことを見つけていく――。カラー写真も豊富に掲載。

(K&Bパブリッシャーズ 1760円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性