「ナラの世界へ」ディーン・ニコルソン著 山名弓子訳

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 愛猫家にとっては憧れの物語である。本書は世の定説「猫との旅はムリ」を、ひょんなことから覆した日々をつづるノンフィクション。

 2018年9月、変化のない日常を変えようと、自転車で世界に飛び出したスコットランド在住のディーンは、その3カ月後、ボスニア・ヘルツェゴビナに到着。山岳地帯を走っているとき、生後数週間の子猫を発見する。人影はなく、間もなく雪も降りそうだ。ディーンは迷った末、子猫を「ナラ」と名付けて一緒に旅をすることを決意。このことがディーンの人生を大きく変えていく。

 時には荷物にナラを隠し、時にはさまざまな猫用書類と格闘し、猫用パスポートを得て国境を越えていく。子猫のナラは体調を崩すこともしばしばで、そのたびにディーンは落ち込み、獣医師の元に走る。気楽な一人旅は、ナラという相棒が現れたことでどんどん予定がずれていった。

 ところが愛らしいナラによって、ひげ面大男のディーンは多くの人々との交流を可能にし、またフロントバッグに入り自転車旅を楽しむナラの姿は、SNSを通して世界中の人を魅了していく。やがてディーンは旅をする中で見知った捨て犬や猫、動物の保護活動家たちとの交流から、自分のなすべきことを見つけていく――。カラー写真も豊富に掲載。

(K&Bパブリッシャーズ 1760円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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