著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「ラストワンマイル」風戸野小路著

公開日: 更新日:

 いやはや、大変だ。秋山が働く国内大手物流会社は、ほとんどブラック企業なのである。サービス残業を強要され、その日のうちに配達が完了すればいいほうで、昼飯を座って食べたことがない。それどころか食べている暇もない過酷な日々である。

 会社創業間もない頃から働いている秋山は、定年まであと1年。噂では、退職金を払いたくない会社が「ジジイ狩り」を繰り出して、老年社員を追い出しているという。そんなときに、港北第三営業所の所長就任を要請されるのである。断りきれずに所長になると、慣れない書類仕事が山ほどあり、これが「ジジイ狩り」なのかと思うほど。

 おまけに港北第三営業所には問題の多い社員が少なくない。たとえば、元暴走族のリーダー西野だ。しょっちゅうクレームが入るのだ。「再配達でお時間指定されていて、お留守でしたよねえ。それですぐに持ってきては難しいですって言いました」と言うので、秋山が「本当にそう言ったの?」と尋ねると、本当は「テメーで時間指定して、すっぽかしといて、すぐ持ってこいだと! どの口が言ってんだ!」と言っちゃったという。集配作業が遅い宇佐美は時間を取り戻すために焦って事故を起こすことが少なくないし、秋山所長は大忙し。

 そういう宅配便営業所の日々を軽妙に描きながら、現状を変革しようとする秋山の戦いを痛快に描く長編だ。 (集英社 704円)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    日本の課題がわかる「リチウム戦争」アーネスト・シェイダー著/ニューズピックス(選者:佐藤優)

  2. 2

    天皇と戦争の世紀(1)岸信介外相の入閣に異を唱えた昭和天皇

  3. 3

    天皇と戦争の世紀(2)軍部の「大権干犯に当たらず」の説明に苛立ち

  4. 4

    皿書店(豪徳寺)「開高健も書いているし、食の本の店にしよう。そんな感じで」1年前にオープン

  5. 5

    「埋もれてきたもうひとつの抑留の真実と、日本政府の冷淡を知ってもらいたい」──「モンゴル抑留 見捨てられた死者たち」井手裕彦氏

  1. 6

    天皇と戦争の世紀(3)無条件降伏の後、日本側が天皇制をどう死守したのか

  2. 7

    「いのち、見つめて」夏川草介、渡辺淳一ほか著|看取りの真意を問いかける傑作医療小説集

  3. 8

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(2)「能面検事の挫折」中山七里著

  4. 9

    よみがえった写真が伝える戦前戦時下の“時代の空気”「AIとカラーでよみがえる戦争の昭和史」別冊宝島編集部編

  5. 10

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(3)「『石球城』殺人事件」北山猛邦著

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  2. 2

    「マクドは健康保険と年金に加入できてよかった」 シニアが働き続けるために必要なこととは?

  3. 3

    徳川光圀(1)水戸黄門は全国漫遊などしていない 主に出かけたのは江戸と領地の往復

  4. 4

    東京・蒲田の2駅結ぶ蒲蒲線、大田区と地元を取材して分かった実現のハードルと地元の思い

  5. 5

    東京・大井町、OIMACHI TRACKSと対照的な東小路飲食店街、商店街理事長が直面する2つの問題

  1. 6

    NHK夏の音楽特番「うたであえたら」は北川景子のMCが見事 カオスと化した近年の紅白はお手本に

  2. 7

    「山口組」抗争指定解除へ、それでも対立は続く…6代目幹部「喜ぶのは早い」

  3. 8

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  4. 9

    止まらない高市首相SNS発信に官邸総動員の実態…この週末は3日間で11連投も「ゴキブリ」投稿で大炎上

  5. 10

    清水アキラさんが三男急死の直前に語っていた“せがれ”のこと 良太郎さんに口説かれものまねショー復帰