「日本の食と農の未来」小口広太著

公開日: 更新日:

 日本の食料自給率は40%を下回っている一方、飽食の時代も続いている。しかし、このまま地球環境が悪化し、農作物の輸出入に不測の事態が起きたら、私たちの食卓はどうなるのだろうか。本書では、持続可能な社会における食、そして農について解説している。

 農林水産業から食品製造業、食品小売業などを経て消費者の食卓に至るまでの食料供給の流れは、すべての段階で温室効果ガスを発生させており、それそのものが気候変動を促す原因となっている。そして、食料自給率の低い日本は、他国よりも多くの温室効果ガスを排出しているのだという。

 食料の輸入が地球環境に与える負荷を把握する、フード・マイレージという指標がある。食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせて導き出すものだが、日本のフード・マイレージは世界トップの約9000億トン・キロメートル。2位の韓国や3位のアメリカの約3倍という不名誉な結果だ。

 さらに、輸入される食料の中には森林伐採や土地奪取に伴い、現地の人々の生活を脅かしているものもある。農薬や化学肥料の過剰使用で、土壌劣化を加速させている食料もある。

 日本は特に穀物を大量に輸入しており、これが世界の穀物市場の不安定化を招いているという一面もある。食料自給率の点から見ると、日本はSDGsに逆行しているといっても過言ではない。

 本書では、若い世代で目立ち始めた非農家出身の新規就農者や、国の独立就農サポート体制なども紹介。生産者と消費者の距離が近い、ローカル・フードシステムの広がりについても解説している。

“持続可能な食卓”のためにできることを、私たち一人一人が考えなければならない。

(光文社 902円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    コメ増産から2カ月で一転、高市内閣の新農相が減産へ180度方針転換…生産者は大混乱

  2. 2

    沢口靖子「絶対零度」が月9ワースト目前の“戦犯”はフジテレビ? 二匹目のドジョウ狙うも大誤算

  3. 3

    “裸の王様”と化した三谷幸喜…フジテレビが社運を懸けたドラマが大コケ危機

  4. 4

    ソフトバンクは「一番得をした」…佐々木麟太郎の“損失見込み”を上回る好選定

  5. 5

    ヤクルトのドラフトは12球団ワースト…「余裕のなさ」ゆえに冒険せず、好素材を逃した気がする

  1. 6

    小泉“セクシー”防衛相からやっぱり「進次郎構文」が! 殺人兵器輸出が「平和国家の理念と整合」の意味不明

  2. 7

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  3. 8

    菅田将暉「もしがく」不発の元凶はフジテレビの“保守路線”…豪華キャスト&主題歌も昭和感ゼロで逆効果

  4. 9

    元TOKIO国分太一の「人権救済申し入れ」に見る日本テレビの“身勝手対応”

  5. 10

    “気分屋”渋野日向子の本音は「日本でプレーしたい」か…ギャラリーの温かさは日米で雲泥の差