「子どもの虐待はなくせる!」関東若手市議会議員の会著

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 著者は、11人の若手市議会議員から結成された児童虐待防止プロジェクトチーム。彼らは児童養護施設や児童相談所などの視察を行いながら、さまざまな勉強会を行ってきた。その結果たどり着いた答えは「なぜ児童虐待が起きるのか」という根本へのアプローチだ。

 児童虐待による痛ましい事件が報道されるたびに、世論もマスコミも「児童相談所の怠慢だ」「虐待通報を警察と共有すべきだ」という取り締まり強化論に陥ってきた。もちろんそれも大切なことだが、一方でこれは虐待の根本を解決することにはつながらず、かえって子育て世帯を孤立させてしまう恐れすらあると本書。むしろ、子育て支援の充実こそが虐待防止の本丸であると主張している。

 虐待が起こる背景にあるのが、「余裕のなさ」であるという。例えば、産後の母親がワンオペ育児となり、精神的余裕のなさが重なって育児ノイローゼになるケースは少なくない。本来なら家族やご近所を頼れるのが理想だが、さまざまな事情からそうはいかない場合もある。すると、精神的な支えになるのが自治体の役目となる。保健師による新生児訪問などの制度はあるものの、ハガキによる申し込み制など使い勝手の悪さが目立つケースも少なくない。

 さらに、「精神的余裕のなさ」の背景には金銭的な問題も潜在している。ひとり親で子どもがいる場合、児童扶養手当の受給が可能だが、手当を受けるには所得を抑えなければならず、しかし手当だけでは生活できず、立場の弱い非正規雇用を選ばざるを得ないなどの負のスパイラルも起きている。

 虐待のない社会づくりは、SDGsの実現にもつながる。私たちにもできることを考えてみたい。

(けやき出版 1650円)

【連載】ポストコロナの道標 SDGs本

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