「遠慮深いうたた寝」小川洋子著

公開日: 更新日:

 映画「サラの鍵」のヒロイン、10歳のサラは、ユダヤ人の一斉検挙の時、弟を納屋に隠して鍵をかける。だが、収容所に送られ、もう家に戻れないと知って、弟を救い出そうと鉄条網をくぐって脱走する。警官に見つかり、引きずり戻されそうになった時、サラは警官に声をかける「ジャック」。そして毅然として「私はサラ・スタルジンスキ」と名乗って握手を求めた。

 サラの名前を知ってしまった警官は、彼女を逃がすしかない。人の名前にはそれだけの力がある。それなのに、小川洋子は自分の作品の登場人物にほとんど名前をつけたことがない。それはたぶん、小川も彼らの名前を知らないからだ。〈「名前の不思議」〉

 不思議な視点でつづられたエッセー集。

(河出書房新社 1705円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」