「英国教会の解剖図鑑」マシュー・ライス著 岡本由香子訳 中島智章監修

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 英国人にとって教会はなくてはならないもの。国内には小教区教会から大聖堂まで1万6000もの教会があるという。

 本書は、時代によってさまざまな変化をしてきた英国の教会建築様式を解説するイラスト図鑑。

 まずは、屋根を支える構造をはじめ、アーチやトレーサリー(窓を支える桟のような石細工の飾り)など、教会の建物を構成するパーツを「教会建築の文法」と称し解説。

 これらの中には、はやり廃りを繰り返しながら何世紀も使用されてきたものもあれば、ゴシック建築だけで通用したものや、今ではすっかり消えてしまったものもある。

 そんな基本の「文法」を頭に入れた上で、英国にキリスト教が伝来した時代にまでさかのぼり教会建築の歴史を振り返る。

 597年、ローマ教皇によってブリテン島に派遣された修道士アウグスティヌスは、修道僧や石工を率いてカンタベリーの地を踏み、王を改宗させ、石の教会を築いた。

 アングロ=サクソンの国にキリスト教が根付いた瞬間だ。アングロ=サクソン人の居住地域では教会が中心的役割を担うようになり、支配層の庇護(ひご)を受けた教会は、地域で一番立派な建物だった。こうしたアングロ=サクソン様式の教会はモルタル仕上げの薄い壁が特徴。

 11世紀初め、サクソン人最後の王エドワード証聖王が亡命先のフランスからノルマンディーの職人や聖職者を連れて帰国し、英国にロマネスク建築(ノルマン建築)をもたらす。1065年完成のウェストミンスター寺院はモデルとなったフランスの建物よりも大きく、英国建築の新時代が始まる。

 以降、アーリーイングリッシュ様式から現代建築まで。様式ごとの特徴とその背景を解説。

 英国好き、建築好きはもちろん、英国旅行の副読本としても楽しい一冊。

(エクスナレッジ 2090円)

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