「世界を変えた100のシンボル」(上・下)コリン・ソルター著、甲斐理恵子訳

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 昨年の東京オリンピックの開会式では、ピクトグラムのパフォーマンスが話題を呼んだ。世界中から集まり、さまざまな言語を話す選手や関係者の目印となるよう、各競技を図案化したこのピクトグラムが五輪に採用されるようになったのは、実は前回の1964年の東京大会からだった。

 本書はこのピクトグラムのように、シンプルで、すぐに理解できるコミュニケーション手段として世界に広まったシンボルを紹介する図鑑。

 日本人には寺院を表す地図記号としてもお馴染みの「卍」は、マンモスの牙から作られた鳥の彫刻に刻まれるなど、約2万年も前から世界中に存在するという。ヒンズー教や仏教とも広く関連し、幸福や幸運のシンボルとして世界の隅々にまで広まった。だが、1920年にヒトラーがナチ党のロゴマークに採用したことによって長く続いた肯定的な意味や威光は失われ、国によっては使用を禁止さえされている。

 キリスト教を象徴する十字架だが、先史時代の石材にもよく彫られていた原始的な装飾模様で、キリスト教以前の文明でも各地で十字形の装飾品を身に着けていたそうだ。

 以後、海賊のシンボルとして知られる「ジョリー・ロジャー」や、ポンド=£やドル=$、円=¥などの通貨の記号、天文学と占星術が起源だという男性/女性を表す♂と♀などの長い歴史を持つものから、アップル社などのIT企業のロゴマークや歯車を模したコンピューターなどの設定アイコン、ゲイ・プライドの他にもパンデミック下で医療従事者への支援と感謝のサインとしても使用されたレインボーまで。人類の歴史を変えた100のシンボルを解説。

 暮らしの中で、何げなく見てきたシンボルの意外な起源や歴史に触れられるお薦め本。 

  (原書房 各2640円)

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