「なぜヒトだけが老いるのか」小林武彦著

公開日: 更新日:

「なぜヒトだけが老いるのか」小林武彦著

 我々ヒトは、突発的な事故や病気にならない限り、老化して病気になって死ぬというパターンが多い。ところが、ヒト以外の生物は老化期間が短いかほとんどなく、老化と死がほぼ同時期に訪れるという。

 たとえば、ヒトと同じ大型霊長類のゴリラとチンパンジーはヒトと大体同じ時期に閉経を迎えるが、それと同時に寿命を迎える。つまり、ヒト以外の生物には老後がなく死ぬまで子どもが産めるのだ。本書は、なぜヒトだけに老いがあるのか、また老いにはどんな意味があるのかを生物学から捉えたもの。

 なぜ「老後」ができたのかを進化的に説明する仮説に「おばあちゃん仮説」がある。ヒトの胎児はゴリラなどに比べかなり大きく難産も多い。生まれてからも子育て期間が長く、母親は乳児の世話にかかりきりになる。そこで登場するのがおばあちゃんだ。子育ての経験がある彼女らが献身的にヘルプすることで群れ全体の生存率が高まる。ヒト以外に例外的に老後があるシャチとゴンドウクジラの群れにもおばあちゃんがいて、子育てに協力していることが知られている。

 たまたま長寿になる遺伝子を持つヒトが現れ、彼女たちが子育てに貢献したため、その長寿遺伝子を持ったヒトがより多くの子孫を増やした結果、集団の中でその遺伝子を持つヒトが多数派になったわけだ。それは子育てする「おばあちゃん」に限らず、多様な経験を有する「シニア」がいる集団が有利となり、結果的に寿命を延ばしたということだ。

 生物学的にいえば、ヒトの寿命はおよそ55歳。現在はそこから30年近く寿命が延びている。そう考えると、ヒト社会におけるシニアの役割の大きさがわかってくる。

 著者は言う。少子高齢化で将来を危ぶまれる日本だが、その再興には、定年などの制度的な制限をなくし、シニアが元気で活躍する社会を目指すことが必要なのではないか、と。 <狸>

(講談社 990円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  2. 2

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  3. 3

    なぜ「愛子天皇」ではダメなのか? 美智子さまが心情を吐露する出版物を準備中…と政界で話題

  4. 4

    鈴木紗理奈以外にもいた…あのちゃんが過去に口にしていた“キライな芸能人”の実名

  5. 5

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  1. 6

    日本ハムがソフトBに8戦全敗の悲惨…崩壊投手陣が口にする「伏見寅威ロス」

  2. 7

    元サッカー日本代表・大津祐樹さんはビジネスでも成功 年商300億円の高級腕時計会社の社長に

  3. 8

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  4. 9

    DeNAビシエド電撃引退のウラとフロント批判殺到の必然《もうハマスタに行こうとは思わない》

  5. 10

    文科省「教育の政治的中立性」で波紋…なぜ森友学園がセーフで、同志社国際がアウトなのか?