著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

TOKIWADAI BASE(板橋・ときわ台)洋書の絵本や歌舞伎関連、投資関係誌まで個性的な貸棚がずらり

公開日: 更新日:

「ここ実家。母親が長い間、洋品店をやってたんです。閉めた後、どうするか。コミュニティービジネスのスクールに通い、ヒントをもらって2021年4月29日オープン。こうなりました」

 店主の渡邉幸典さん(65)はそう言うが、いやはや主も店も酔狂だ。

 店頭に置いた木箱に、100円と500円の均一本。外から本棚が見える。シェア本棚の本屋さんだと思って来た。しかし、店内でまず目に飛び込むのは、往年のスポーツカーや戦闘機のプラモデルの箱。空箱? いや、渡邉さんがカバー画を指して「佐竹政夫さんのイラストが大好きでねー」。観賞用だ。

 店の奥には、本物のオートバイが。「1982年型のホンダ250。350万円かけてカスタマイズした」との代物。ほかにも鉄道模型、レザークラフト、カメラ……。渡邉さんは「幼稚園のとき、サボテンを集めた」以来の収集癖あり。ご自身のコレクションずらりなのである。すべて非売品。同好の人たちが集まってくるそうだが、お金を生みませんよね?

「そう。大変なのよ。年に3回しか帰らない埼玉の家に住む妻に、年金は全部送ってるし」と。あらら。

読書会ほか将棋、ギターの会など定期開催

 閑話休題、“BOOK BASE”と名付けられた本のスペースへ。「カーグラフィック」「クラブマン」など渡邉さんの歴代蔵書が壁紙のように収まる棚もあるが、メインは「初回のみ1万円、毎月3300円」という破格での貸棚。

 洋書の絵本ばかり並ぶ棚あり、心の健康管理の本がかたまった棚あり、「歌舞伎のデザイン図典」を中心にその関連本を置く棚あり。類は友を呼ぶのか。ここの棚主さんたち、個性的だなー。

 初めて見る「月刊タートルズ」が複数冊あった。投資関係誌で、版元が棚主だそう。売れます?

「全然」と渡邉さん、即答。

「でも月刊なので毎月きちんと送ってきますね」

 ということは、この店にひとかどの投資家も集っていると専門筋は踏んでいるんだ、とひとり言。来店中だった常連、森広誠さん(57)が、「ここで読書会を開いています。先日は、7人で村田沙耶香著『コンビニ人間』を」。店内に広いテーブルがあり、読書会ほか将棋、ギターの会、「癒やしのワークショップ」も開かれている。

◆板橋区南常盤台1-29-9/東武東上線ときわ台駅南口改札前/℡090.9243.4754/火・水・金曜12~19時、土・日曜10~19時、月・木曜休み

ウチらしい本

「力道山のロールスロイス」1982年刊 中沖満著

「副タイトルは『くるま職人 想い出の記』。車好きで、車の塗装職人になった人が、職人として腕を上げていく様子が丁寧に描かれています。どれだけ腕がいいかというと、タイトルにあるように力道山もロールスロイスの塗装を頼みにきたわけで。そのときのやりとりにも感動しますよ。著者とはモーターサイクルのクラブの仲間でした」

(山海堂 売値600円)

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