著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

らんぷ堂(歌舞伎町)東京ミステリーサーカス内の謎解き本の専門書店

公開日: 更新日:

 新宿・歌舞伎町のTOHOシネマズの東隣。ビルの地下1階~5階が「東京ミステリーサーカス」という空間だ。イベントチケットを買い、“刑務所”や“隠し金庫”など場内各所で謎を解く「リアル脱出ゲーム」を楽しむところらしい。その中に2年前にできた「らんぷ堂」は、脱出ゲームに使われる場所の1つながら、ゲームと無関係に訪れてOKな本屋。もちろん入場無料。

「謎解き本の専門書店です」と、迎えてくれた店長の合志佳奈子さんがおっしゃる。「ええっと、ミステリー本だけを集めた、ってことですか」と返した私に、「いえいえ、もっと広いジャンルです」と。

 25平方メートルに1500冊。平台で、「新しい読書体験フェア」を開催中だった。道尾秀介著「きこえる」、藤崎翔著「逆転美人」、杉井光著「世界でいちばん透きとおった物語」がデーンと積まれている。「きこえる」は、QRコードを読み取って動画を聞いて読むホラーミステリー、「逆転美人」と「世界で──」はいわく「紙の本でしか体験できない感動」がある物語なのだとか。ほー。手に取り、ここに来たからこそ出合えたジャンルだ、と喜んでいる場合じゃなかった。次々と面白い本が目白押しだったから。

「この本、又吉直樹さんも絶賛しています」と紹介されたのが、泡坂妻夫著「生者と死者」。文庫本だが、16ページずつ袋とじされていて、あれれ。「はじめはそのまま読んで下さい。完結した1編の物語ですが、そのあと袋とじを開くと長編になるんです」と合志さん。すごーい仕掛けだなー。

「とにかく読んで」と書いた棚には、すべての短編に「叙述トリック」が含まれているという似鳥鶏著「叙述トリック短編集」。「方言ものしり事典」「気持ちを表すことばの辞典」「漢字の語源図鑑」など、私など職業柄「欲しい!」と叫びたくなる本が並ぶ。なるほど、それらも謎解きといえば謎解きだ。近年じわじわはやっているマーダーミステリー(ゲーム)ほか雑貨にへばりついているお客さんも多かった。

◆新宿区歌舞伎町1-27-5、APMビル 東京ミステリーサーカス2階/JR新宿駅東口から徒歩7分/平日11時半~22時、土・日・祝日9時20分~22時、不定休

ウチらしい本

「きょうはなんのひ?」瀬田貞二作、林明子絵

「“謎解き”の本は、大人用に限りません。これは、小学生のまみこが、『おかあさん、きょうはなんのひだか、しってるの?…しらなきゃかいだん三だんめ』と言うシーンから始まり、お母さんが指示された場所に行くと、また次の指示がある……という、謎解き絵本です。言い方を変えると、極上の家族の物語。大人にも子どもにも味わってほしいです」

(福音館書店 1320円)

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