著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「ガーナ流家族のつくり方」小佐野アコシヤ有紀著

公開日: 更新日:

「ガーナ流家族のつくり方」小佐野アコシヤ有紀著

 思えば無知で怠惰な10代だった。世の中にどんな学問があるかも知らず、やる気も自信もなく、もちろん成績も悪く、ふてくされていた。

 もしもあの頃に戻れるならば、もっとがんばって勉強するよ。大学で文化人類学を専攻して、アフリカでフィールドワークをしてみたいなぁ。などと夢想する中年のわたし。

 本書はそんなわたしの憧れの一冊、キュンキュンしながら読んだ。著者は東京外国語大学でアフリカ地域研究と文化人類学を学び、20歳でガーナに留学した。日本育ちの若い女性が単身ガーナに滞在したのだから、心身ともに大忙しだっただろう。その揺れや落ち込みの描写を含めて、みずみずしい筆致に引き込まれる。

 著者が注目したのはガーナ人の家族観。村の中学生たちに「何人家族ですか?」とアンケートをとったら「105人」とか「数えたことないよ、50人ってことでいい?」なんて回答が返ってくる場面が印象深い。

 かの地では血縁を超越して、世話をする(される)関係が無数にある。日本で祖父の介護を経験した著者には、その融通無碍な家族のかたちが「救い」に感じられたという。

 ときどき挿入される埼玉県草加市のガーナ人コミュニティーのエピソードも魅力的だ。いまやアフリカルーツの人は日本にもたくさん住んでいる。彼らと親しくなれば、おおらかな家族観を垣間見られるに違いない。

 と、ここまで書いて気づいた。わたしにもアフリカ出身の友人が何人もいるではないか。無知と怠惰を引きずりながらぼんやり生きてきたけど、案外願ったことの近くにいるのかもしれない。

(東京外国語大学出版会 2420円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  2. 2

    豊昇龍が長期離脱で大の里までピンチ! “ひとり横綱”の重圧で「共倒れ」にならないか

  3. 3

    菊池風磨はジャニー喜多川氏の“推薦”もあって慶大総合政策学部に進学 仕事の合間に1日10時間の猛勉強

  4. 4

    北島三郎(2)2018年に次男が急逝「息子だけど、音楽の、とても良い仲間でもあった」

  5. 5

    SNSで大バズリ! 高市首相の「激ヤバ発言動画」発掘がブームに…中には悪質な切り取りも

  1. 6

    『ヘイ・ブルドッグ』ポールの見事なアドリブに感じるコーラスグループのすごみ

  2. 7

    有望高校球児の進路事情に異変! 青学大は「ドラフト指名と同等の価値」「明大より上」とプロスカウト

  3. 8

    KDDIが楽天モバイルへの「ローミング」終了でライバルの“品質低下”を狙い撃つ

  4. 9

    新庄日本ハム舵切り「2位シフト」 騙し騙し起用の万波中正をついに登録抹消

  5. 10

    東京・銀座、KK線再生で誕生、東京スカイコリドーは高さ8.5メートル天空の遊歩道