小鳥書房(国立・谷保)料理詩集からエッセーまで店主の選書が心地よい

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 普通の住宅街に、レトロなアーケードの「ダイヤ街商店街」が忽然と現れる。「初めて来たとき、物語がありそうと思いました」と振り返る落合加依子さん(36)こそが、今やその商店街の物語を大きく紡ぐ人だ。

 かつて出版社に勤務。「売れる本作り」に限界を感じていた頃、国立駅に降り立つと「空が広かった」。この町で、地域コミュニティーを兼ねたシェアハウスを造る企画を練る。出資者が現れ、ダイヤ街で定員5人の「コトナハウス」を立ち上げたのが2015年。

 集う人たちから「本を出したい」との声が届き、「たとえば海辺の町で、亡くなった奥さんを思い出しながら読んでくれる1人の読者」のための本を作ろうと思い立つ。同じくダイヤ街で出版社「小鳥書房」を開業し、19年に書店も開いた。

 と、あらすじを聞き、しびれた。落合さんは目下、5月に出産を控えているが、軽々と店内を動き回る姿も頼もしい!

 25平方メートルの店内に推定2500冊。新刊と古本が半々。平台にあった赤い本「ちゃんと食べとる?」にまっすぐ目がいく。

「非行少年にご飯を作り続けてきた、広島のばっちゃんの料理詩集。17年刊のウチの1冊目です」と落合さん。「え? この方、ずいぶん話題になってましたよね」と私。女性週刊誌のコラムで“ばっちゃん”を知り、広島へ一番乗りして取材を続け、他社より早く出版できたそう。

 次に面陳列コーナーの「家族最後の日」を手に取る。女児2人の重い表情の表紙写真に、「以前書評で読んで気になっていた一冊だ」と気づく。「著者の植本一子さん、知り合いです」とのことで、落合さんの手のひらに心地よく乗せられちゃってるなー。

 お化け雑誌「怪と幽」「ホラーの哲学」「文豪と怪奇」などが隣り合うコーナー、本作りや出版関係本のコーナーも面白そうだし、シェア本棚も賑やかだ。この日は若い女性客が目立ったが、「買い取りをお願いできる?」と古本を詰めた大きな紙袋持参の熟年男性客もやってきた。

◇国立市富士見台1-8-15/JR南武線谷保駅から徒歩4分またはJR中央線国立駅からバス7分+徒歩3分/4~6月は水・木曜の11~16時、7月以降は水~土曜の13~19時(予定)

「本屋夜話『小鳥書房文学賞』」詞華集


「小鳥書房は、2020年に“世界一身近な文学賞”こと『小島書房文学賞』を創設。第1回は『とり』をテーマに短編小説を募集したところ、中学生から80代の方まで167作品の応募があり、作家と映像プロデューサーに審査をお願いしました。この本は受賞作品12点を収録。装丁にも凝ったアンソロジーです。作者お一人お一人の人間味も見えてくる作品ばかり。ぜひご覧ください」

(小鳥書房編著・刊 1540円)

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