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「暴力とポピュリズムのアメリカ史」中野博文著

 アメリカでは「もしトラ」が現実になると危惧されている。またしてもポピュリズムの時代か!?

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「暴力とポピュリズムのアメリカ史」中野博文著

 副題に「ミリシアがもたらす分断」とある。ミリシアは「民兵」の意味だが、本書によるとアメリカではもともと政府が設置した軍の組織だという。現在は「州軍」だ。それとは別に、勝手に私設の軍隊か警察のように振る舞って、テロや殺人事件を起こす極右の武装団体もミリシアを名乗る。中には軍人や警察官くずれの多い団体もあるという。

 問題はヨーロッパの極右と違い、アメリカの極右は「自由で平等な国を守ろうという強い意志」を掲げ、「左派である民主党が政権を獲得した場合、必要なら政府への武力闘争を起こせ」というメッセージを発信することだ。しかも憲法で「よく規律されたミリシアは、自由な国家の安全にとって必要であるので、人民が武器を保有し、携帯する権利を侵してはならない」とあるのを盾にするため、政府もなかなか取り締まれないのだという。

 歴史上でもミリシアは、市民が自発的に祖国を守る理念から「戦争を抑止する非戦の伝統をもたらした」という面があるが、実はしばしば反乱や暴動を起こし、先住民や黒人、異端派のキリスト教徒を勝手に弾圧したりもしてきた。

 歴史と現代をつなぐ暴力のアメリカ史。「ポピュリズムとは、政治を支配するエリート層が一般市民を欺いていると騒ぎ立て、暴力沙汰もいとわない態度」と定義する。著者は米政治外交史が専門の北九州市大教授だ。

(岩波書店 1034円)

「増補版 維新政治の本質」冨田宏治著

「増補版 維新政治の本質」冨田宏治著

 過去10年以上にわたって日本の政治を騒がせた筆頭はやはり維新の会だろう。橋下徹のいう「ふわっとした民意」の受け皿という表向きとは裏腹に、保守の域を超えたタカ派ぶりで一躍ネトウヨ時代に急成長を遂げた。

 本書はその本質を「不寛容なポピュリズム」という。格差社会の無残な現実に対する怒りや恨みを巧みに利用しながら弱者を排除するのだ。

 著者は日本政治思想史を専門とする関西学院大教授。大阪維新のお膝元にも近いだけに、その危うさ、うさんくささにも早くから敏感だったに違いない。

「絶対得票率30%前後」という数字を常時たたき出す維新。その危うさ、怪しさを解剖する本書は2年前に出て大きな話題になった第1版に次ぐ増補版。副題は「組織化されたポピュリズムの虚像と実像」。

(あけび書房 1980円)

「右翼ポピュリズムのディスコース【第2版】」ルート・ヴォダック著 石部尚登訳

「右翼ポピュリズムのディスコース【第2版】」ルート・ヴォダック著 石部尚登訳

 大衆扇動のポピュリズムは腕力ではなくコトバをふるう。差別や排除をあからさまにではなく、一見もっともらしい言い回しなどを駆使して表現する。本書の「ディスコース」は「言説」のこと。ある事柄を言い表す論理と修辞(レトリック)の組み合わさったものがディスコースだ。

 著者はオーストリア出身の言語学者。すでにイギリスの大学を定年退職した名誉教授だが、学者としては現役。

 本書はヨーロッパを中心に現代の保守政治や右翼に顕著になった排除や憎悪にまつわる言語表現を読み解く専門書。具体的な事件や扇動政治家の事例を多数とりあげて、SNSに投稿した文章や画像までを例示して分析してみせる。

 人種や女性への差別が陰険なかたちで表される実態がつぶさに明らかにされている。

(明石書店 4950円)

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