著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「世界の飼い犬と野生犬」トム・ジャクソン著、菊水健史監修、倉橋俊介訳

公開日: 更新日:

「世界の飼い犬と野生犬」トム・ジャクソン著、菊水健史監修、倉橋俊介訳

 この本と同時に「世界の飼い猫と野生猫」も発売になって、わたしの心は揺れた。どちらも写真満載、大判のビジュアル図鑑。わたしは長く「部下は猫2匹」を標榜し、しょっちゅう猫のイラストを描いているので「猫派」とみなされている。ちなみに部下は2匹とも先にあちらへ旅立った。追って三途の川で合流する手はずである。

 でも今回取り上げるのは犬の本のほう。理由は、はたらく姿が載っているから。猫も犬も長くにんげんの友人だが、さまざまな職場を与えられてせっせと仕事をしているのは犬だ。「狩猟犬」「使役犬」の章が充実していてうれしい。羊の群れの横を疾走するボーダーコリー、トリュフを嗅ぎ当てるダックスフント、水難救助に向かうラブラドルレトリバー。世界各地で今日も犬たちはがんばっているのだなぁ。と怠惰なにんげん(わたし)は寝転んで本を眺めてニヤニヤしている。

 はたらく犬につい頬が緩んでしまうのは、子どものころ実家でパピーウォーカー(盲導犬になる前の子犬を預かるボランティア)をしていたからかもしれない。しかし我が家で生後1年までを過ごし、盲導犬訓練所に巣立っていったメスのシェパード「リンダ」は、ついに盲導犬になれなかった。落ちこぼれ犬として訓練所から戻ってきて、うちの庭でのんきな余生を送った。おっとりした犬だった。後年、盲導犬訓練士をしている人と知り合いこの話をしたら、彼は間髪入れずに言った。

「盲導犬になれてもなれなくても、その犬らしく生きることがいちばん大事です。落ちこぼれの犬なんていません」

 犬はいいなぁ。はたらかない猫もいいなぁ。 (エクスナレッジ 3080円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    本命は今田美桜、小芝風花、芳根京子でも「ウラ本命」「大穴」は…“清純派女優”戦線の意外な未来予想図

  1. 6

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  2. 7

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  3. 8

    石破首相続投の“切り札”か…自民森山幹事長の後任に「小泉進次郎」説が急浮上

  4. 9

    今田美桜「あんぱん」44歳遅咲き俳優の“執事系秘書”にキュン続出! “にゃーにゃーイケオジ”退場にはロスの声も…

  5. 10

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃