著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「食卓の世界史」遠藤雅司(音食紀行)著

公開日: 更新日:

「食卓の世界史」遠藤雅司(音食紀行)著

「ぼくがつくったジュースを飲めば絶対に風邪をひかない」とイラン人のメヘディさんは豪語している。テヘランのお宅を訪ねたとき目の前で作ってくれたそれは、クミン、セロリ、ミント、レモン汁、タマリンド水、塩、蜂蜜などを目分量で混ぜた謎ジュースだった。なんとも形容しがたい色と味をしていたが……うん、たしかに体にはいいような。わたしはそれを「メヘディ・スペシャル」と名付けた。

 本書は、歴史料理研究家の遠藤雅司さんが古今東西の英雄の食卓をひもといていく一冊。ハンムラビ、アレクサンドロス3世、ネロ、楊貴妃と続いていくラインアップに世界史好きの胸は躍る。

 アレクサンドロスの宴会には寝台が用意されていて、武将たちはしばしば横になって食事をとった(行儀の悪いわたしが憧れる飲み会スタイル!)。マルコ・ポーロはモンゴル語、ペルシャ語、トルコ語、ウイグル語を習得してそれぞれ読み書きができた(語学ができる冒険家、高野秀行さんみたい)。フリードリヒ2世は若い頃コーヒーを1日40杯飲んでいた(やばいね。依存症だね)。エピソード満載で本は瞬く間に付箋だらけに。

 5~6世紀にビザンツ帝国の兵士が飲んでいた「フスカ」という健康飲料が気になった。ベースは酢と水。時代が下るとそこにさまざまなハーブが加えられていったとか。クミン、ペニーロイヤルミント、セロリシード……。

 あれ? イランで飲んだ「メヘディ・スペシャル」となんとなく似ている? わたしはビザンツ帝国の勢力地図をネット検索し、にんまりと眺めた。この本からいろんな妄想が広がるなぁ。

(筑摩書房 1012円)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景