「そして誰かがいなくなる」下村敦史著

公開日: 更新日:

「そして誰かがいなくなる」下村敦史著

 ミステリー界の大御所にして覆面作家、御津島磨朱李が、森の奥深くに贅を尽くした洋館を建てた。さらに誰にも見破られない隠し部屋まで設けている。

 そんな邸宅のお披露目に、ミステリー作家が4人、文芸評論家と御津島の担当編集者、名探偵の7人が招待された。最初のうちは和やかに過ごしていたが、御津島が登場し「今夜、あるベストセラー作品が盗作であることを公表する」と告げると空気は一転。さらにどこからか絶叫が聞こえ、御津島の姿が消えてしまった。

 客人たちは互いに疑いのまなざしを向けつつ、御津島の居場所を推理していく。彼は殺されたのか、全員のアリバイ、動機、邸宅内の動線は……。外は吹雪で移動は不可、携帯もなく、身動きが取れない“クローズド・サークル”で、一体何が起こっているのか。

 著者が実際に建て、暮らしている洋館を舞台に描いたという、前代未聞のミステリー。間取り図はもちろん、豪華な書斎やリビングなど室内写真も各所に掲載されているため、読者は写真を見返しながら、作中の人物とともに犯人捜しを楽しめるだろう。部屋の鍵がすべて抜き取られ、メモが発見されるなど、何重にも張り巡らされた伏線に、最後まで翻弄される。

(中央公論新社 1980円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ