「武器としての土着思考」青木真兵著

公開日: 更新日:

「武器としての土着思考」青木真兵著

 人口1600人の奈良県東吉野村に移住し、私設図書館ルチャ・リブロを運営している著者。そのきっかけは都市生活において覚えた「危機感」だったという。資本の原理が支配する世界に身を置き、侵されてしまうと人はすべてを「商品」としか見ることができなくなってしまう。この感覚を少しでも和らげるために、地に足をつけること=「土着」という「自分にちょうどよい」が必要だった。

 現代社会では物質的な豊かさと引き換えに「自分の生」は「商品を選ぶ」ことと同じ意味になってしまい、「労働力としての商品価値」があるかが人の命を測る基準になっている、と著者は指摘する。それに気づくためにはいったん、社会の外に出ること。

 その社会の外とは世俗の論理が通じない場所で、たとえば山村での暮らしの基本は、商品を基礎づける経済合理性ではなく不合理にある。その不合理があるからこそ、できないことを他人に頼むことになり、それこそが他者ニーズから抜け出す個人的な体験を生み出すことになる、という。

 土着的思考から、生きること、働くこと、住むことの「ちょうどよい」を見つけるヒントをつづった本書。ひとつの原理におぼれず、社会の内と外とを行き来するという発想に、新しい社会の在り方が見えてきそうだ。

(東洋経済新報社 1980円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    戸郷が離脱、則本メッタ打ちで巨人が緊急補強へ…候補に挙がる「オリックス投手」の名前

  2. 2

    巨人エース戸郷翔征の不振を招いた“真犯人”の実名…評論家のOB元投手コーチがバッサリ

  3. 3

    佐藤二朗騒動の余波!「福田組」の長澤まさみへの“ハラスメント”舞台挨拶の悪ノリ動画が再注目…女性視聴者は嫌悪

  4. 4

    孤立深まる高市首相…国会10日ぶり正常化でも続く“包囲網” 与党内からも反発の声噴出の自業自得

  5. 5

    ベネズエラの剛腕マチャドが今オフ、オリックスとの契約満了で日米争奪戦に発展か

  1. 6

    小池栄子が一番の被害者? 佐藤二朗“ハラスメント騒動”に足引っ張られた「さよならノワール」の評価は上々

  2. 7

    高市首相が衆院集中審議に“出たくない”とブー垂れ…身内の自民国対「もう疲れ果てた…」ヘトヘトのお気の毒

  3. 8

    山田涼介が「令和最強アイドル」と評されるワケ…主演ドラマ「一次元の挿し木」は玉森裕太を三歩リード

  4. 9

    白井球審への“侮辱行為”で退場した一部始終「何やおまえ、いい加減にしろよ!おまえも未熟なんだから…」

  5. 10

    沈黙貫く橋本愛vs佐藤二朗「週刊新潮」で反論の泥沼化…SNS連投で"自滅"を心配する声も