「知的障害者施設潜入記」織田淳太郎著

公開日: 更新日:

「知的障害者施設潜入記」織田淳太郎著

 知人の依頼で、一時、知的障害者施設で働いたノンフィクション作家が、現場で見聞きしたその実態を伝えるルポ。

 母親への強い愛着心が時に暴言や暴力になってしまう「アベッチ」、自宅のゴミ屋敷化に耐えられなくなった弟によって施設に入れられた「育子さん」、姉御肌の「ワンコさん」など。入所者との日々の交流を描く一方で、高尚な福祉の理念を掲げながらも、目を疑い、耳をふさぎたくなるような虐待の温床となっている施設の現実を告発。もっとも深刻なのは、虐待に手を染める側が、それを虐待だとは認識せずに本人のためとする懲罰手段によって彼らの私生活の一切に監視の目を光らせていることだという。

 多くの人の心の奥に潜む差別的・優生的な観念をもあぶり出す渾身作。

(光文社 1408円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 4

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  5. 5

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  1. 6

    巨人が助っ人左腕ケイ争奪戦に殴り込み…メジャー含む“四つ巴”のマネーゲーム勃発へ

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    支持率8割超でも選挙に勝てない「高市バブル」の落とし穴…保守王国の首長選で大差ボロ負けの異常事態

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝