著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

早春書店(国分寺)高校時代に通った古本屋が店主の原点

公開日: 更新日:

 その昔、村上春樹が開いたジャズ喫茶があり、中山ラビも店をしていた町だ。と、思いながら国分寺駅から歩いて来たのだが、着いて思った。さすが、そうした時層、地層上にある本屋さんだと。

 表には均一本が並び、入ってすぐの棚には「北欧 かわいいものみつけた」「美術館へ行こう」など。ふむふむ、ライトタッチ。ところが、一歩、二歩と進むと、おや? 「にっぽんアニメ創生記」とか「元祖ロッキン・ラヂヲ」とか。サブカルの本が多数散見され、片や社会科学系の新書のかたまりも。もっと進むと、「マルクス最後の旅」「歴史社会学の作法」「アメリカ公民権の炎」「言語と格差」と目が合った。7坪全体が、心地よい“本の森”なのである。

「埼玉・志木で過ごした高校時代、よく見るとサブカルが潜んでいる一見普通の古本屋が何軒かあって」と、店主の下田裕之さん(40)。よく行ったそれらの店が原点。大学卒業後、ジュンク堂に10年勤め、吉祥寺の著名店「よみた屋」で古本修業をして、2019年に開店した。古書組合に入らず、客からの買い取りで運営しているそう。

「これもです」と、下田さんが、サイケデリックなイラストが描かれた大判の雑誌「Wonder Land」を見せてくれ、「1973年の『宝島』創刊号なんです」って、す、すごい。執筆陣の名に、植草甚一、片岡義男、佐藤信、筒井康隆、淀川長治、浅川マキらが挙がっている。

「下田さんの生まれる前の刊行だけど、影響を受けました?」と聞くと、「もちろん」と全肯定。

 実は、下田さんはライター活動もしており、すでに共著書2冊を上梓。「NEW BOOK」と書かれたコーナーに、「武蔵野地図学序説」「ダイバーシティ・ポリス宣言」「長い読書」などと共に並んでいた。

 2冊のうち、私がこの日買ったのは「政治家失言クロニクル」。これが面白かった。帰りの電車の中で読み耽り、降りるべき駅を行き過ぎてしまったのだった。

◆国分寺市本町2-22-5/℡042.407.8945/JR中央線国分寺駅北口から徒歩5分/12~20時、月曜休み(臨時休あり)

わたしの書いた本

「ポスト・サブカル焼け跡派」TVOD著

「著者名のTVODは、大学時代からの友人と2人のテキストユニットです。矢沢永吉ビートたけし、フリッパーズ・ギター、椎名林檎星野源……。70年代から10年ごとに選出した、おのおの3人のアーティストについて語り合い、ナンバーワンだったジャパン・カルチャーが『焼け跡派』となるまでの文化的精神史になりました。ネットにアップしていたら、版元の方の目にとまり、紙の本になったんです」
(百万年書房 2640円)

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