著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

Platform3(東中野)LGBTQ+に関する本を中心に東アジアの文化に焦点

公開日: 更新日:

 少々古めかしいビルの階段を4階まで上がり、赤いドアを開ける。と、そこに広がっていたのは、何だか楽しそうな空間。店名「プラットホーム3」に、なるほど。1、2番線があるJR東中野駅から至近距離で、電車の音が心地よく聞こえる場所だから。

「ここ? 去年の8月にオープン。窓が広くて開放感があるのが決め手になりました」と、デザイナー、潟見陽さん(50)。写真家・ともまつりかさん(36)、IT企業勤務の丹澤弘行さん(34)との3人で共同経営しているそう。

 もともと潟見さんが、新宿区大久保の自宅にクィア(性的マイノリティー)系の本を置く本屋「loneliness books」を予約制で設けていた。そこを時々訪れていた、ともまつさんと丹澤さんは、「(TT)press」という名の2人ユニットでジン(自主出版物)を出した。そんな折に、潟見さんが招かれたソウルでのタイポグラフィー学会についていき、日韓の参加者でジンを作る潟見さんのワークショップに参加。3人の距離が縮まったのが、「一緒に本屋をやろう」の伏線になった。

オープン以来のベストセラーは…

 店の広さは、約34平方メートル。冊数は5000冊くらいと拝察。入るとすぐに、韓国の絵本の数々が目に飛び込んできた。おや? 週刊誌の書評に「台湾と沖縄をめぐる物語」と載っていたコミック「隙間」あり、「マレーシアの街のタイポグラフィ風景」という大胆な装丁の本あり。

LGBTQ+やフェミニズムに関する本を中心に、東アジアの文化に焦点を当てて、3人それぞれが選んでいます」(潟見さん)

 奥の棚には、私のお気に入り系の本もずらり。新書の「日本人が知らない戦争の話」「ひとり暮しの戦後史」、ジン「自治」を手に取った後、「オープン以来のベストセラーは?」と聞く。

 潟見さんが「25年前に、セックスワーカーだった現代美術家が綴った日々の記録です」と、自身のレーベル「loneliness books」で制作した「売男日記」を。ともまつさんと丹澤さんは「飾っても楽しめるように、とじない製本になっています」と、「(TT)press」と真田英幸制作による18人の男の子の写真集「またね、きっと。」を見せてくれた。

ウチの推し本

「2475 シャムのゴーストライター」サアート著

「タイトルの『2475』とは仏暦2475年。つまり西暦1932年のこと。タイで絶対王政が倒され、立憲革命が起きた年です。主人公は、タイの新聞社の校閲者、ニパー。彼女の父は、憲法起草に関与した罪で捕らえられ、獄中で命を落とす……。この本は、実在の人物や出来事をもとに、ニパーら女性の視点から立憲革命を描いたコミックノベル。タイ語ですが、スマホの翻訳機能を使えばたぶん読めます」

<3800円 (TT)press取扱>

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景