著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

公開日: 更新日:

「巌窟の王」友井羊著

「事実は小説より奇なり」という言葉がある。書店で働き始めてノンフィクションの棚には日々面白そうな本が入荷され、大きく売れるものもある。

 だがここで短絡的に「フィクションはノンフィクションに劣る」と考えてはならないと思う。小説の中には実在の歴史、事件を元にしてフィクションならではの盛り付けをすることによって、読者を興奮させ、また元ネタになった事象への興味を、教科書やニュースの文面よりも引き付けさせる力がある。今回はそんな実在の事件を濃厚な長編小説に仕上げた本書を紹介したい。

 1913年の名古屋、ガラス吹き職人の岩田は身に覚えのない強盗殺人の罪で突然警察に逮捕される。事件を起こしていたのは同僚の沼澤という男。この沼澤も捕まってはいるのだが、自分の罪を軽くするために主犯は岩田だと嘯いたのだ。当然、いわれのない罪なのですぐに釈放されるだろうと思っていた岩田だが、捜査陣の決めつけにより起訴され裁判で死刑判決を受けてしまう。あまりにも理不尽な彼の人生。ここから、この殺人事件の再審無罪を目指す長い長い50年が始まるのだ。どんな酷い目に遭っても決して心折れることなく抵抗し続けた岩田。相手が弁護士だろうと、裁判官だろうと大臣だろうと関係なく、直談判で無罪を訴えていく。その愚直とも言えるほどの真っすぐさに周りの登場人物も読んでるこちら側も心を打たれる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    戸郷が離脱、則本メッタ打ちで巨人が緊急補強へ…候補に挙がる「オリックス投手」の名前

  2. 2

    巨人エース戸郷翔征の不振を招いた“真犯人”の実名…評論家のOB元投手コーチがバッサリ

  3. 3

    佐藤二朗騒動の余波!「福田組」の長澤まさみへの“ハラスメント”舞台挨拶の悪ノリ動画が再注目…女性視聴者は嫌悪

  4. 4

    孤立深まる高市首相…国会10日ぶり正常化でも続く“包囲網” 与党内からも反発の声噴出の自業自得

  5. 5

    ベネズエラの剛腕マチャドが今オフ、オリックスとの契約満了で日米争奪戦に発展か

  1. 6

    小池栄子が一番の被害者? 佐藤二朗“ハラスメント騒動”に足引っ張られた「さよならノワール」の評価は上々

  2. 7

    高市首相が衆院集中審議に“出たくない”とブー垂れ…身内の自民国対「もう疲れ果てた…」ヘトヘトのお気の毒

  3. 8

    山田涼介が「令和最強アイドル」と評されるワケ…主演ドラマ「一次元の挿し木」は玉森裕太を三歩リード

  4. 9

    白井球審への“侮辱行為”で退場した一部始終「何やおまえ、いい加減にしろよ!おまえも未熟なんだから…」

  5. 10

    沈黙貫く橋本愛vs佐藤二朗「週刊新潮」で反論の泥沼化…SNS連投で"自滅"を心配する声も