「巌窟の王」友井羊著
「巌窟の王」友井羊著
「事実は小説より奇なり」という言葉がある。書店で働き始めてノンフィクションの棚には日々面白そうな本が入荷され、大きく売れるものもある。
だがここで短絡的に「フィクションはノンフィクションに劣る」と考えてはならないと思う。小説の中には実在の歴史、事件を元にしてフィクションならではの盛り付けをすることによって、読者を興奮させ、また元ネタになった事象への興味を、教科書やニュースの文面よりも引き付けさせる力がある。今回はそんな実在の事件を濃厚な長編小説に仕上げた本書を紹介したい。
1913年の名古屋、ガラス吹き職人の岩田は身に覚えのない強盗殺人の罪で突然警察に逮捕される。事件を起こしていたのは同僚の沼澤という男。この沼澤も捕まってはいるのだが、自分の罪を軽くするために主犯は岩田だと嘯いたのだ。当然、いわれのない罪なのですぐに釈放されるだろうと思っていた岩田だが、捜査陣の決めつけにより起訴され裁判で死刑判決を受けてしまう。あまりにも理不尽な彼の人生。ここから、この殺人事件の再審無罪を目指す長い長い50年が始まるのだ。どんな酷い目に遭っても決して心折れることなく抵抗し続けた岩田。相手が弁護士だろうと、裁判官だろうと大臣だろうと関係なく、直談判で無罪を訴えていく。その愚直とも言えるほどの真っすぐさに周りの登場人物も読んでるこちら側も心を打たれる。

















