「巌窟の王」友井羊著
この話のモデルになったのは、大正時代に発生した冤罪事件、通称「吉田巌窟王事件」である。不勉強なもので私はこの小説で吉田巌窟王事件を初めて知り、調べ、その壮絶さに驚いた。昨今も袴田事件など、大きな冤罪事件がニュースになることもあるが、近代司法が整ったばかりの日本で実刑を食らい投獄されてから無罪を勝ち取るのは更に難儀で奇跡的なことだ。そしてこの事件を丁寧に扱い、核の熱い部分をしっかり伝えた著者の真摯な姿勢に脱帽である。
著者の友井羊さんと言えば「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん」シリーズが代表作だが、そこからまたガラリと変えて歴史長編に挑んだ著者の気概も素晴らしい。
ぜひフィクションをきっかけに実在の事件、歴史に心を移し、深く考えてもらいたい。 (光文社 2145円)


















