「尚、赫々たれ」羽鳥好之著
「尚、赫々たれ」羽鳥好之著
書店で働きはじめてから、各出版社のカラーみたいなものが分かるようになってきた。ここの出版社はビジネス書が強い、この出版社は資格書メインなんだな……というのもあれば「文芸メイン」の出版社の中でもそれぞれこのジャンルが強いなと特色が出ている。
ここであげたいのが早川書房である。昭和20(1945)年設立の歴史ある出版社で強いのはSFとミステリー。国内だけでなく海外翻訳においても確固たる地位を築き上げた印象だ。そんな早川書房、実は最近「時代小説」が熱いのだ。7年前に新レーベル「ハヤカワ時代ミステリ文庫」を立ち上げたし、ミステリーでなくても今回紹介する本作のように上質な時代小説もそろっている。
本作のメインテーマは「関ケ原の戦い」。今まで数多くの作家が取り上げてきている戦国時代最大級の出来事だが、この小説は明らかにほかの作品と「関ケ原の戦い」の見せ方を変えているのだ。
まず主人公が立花宗茂。渋い。関ケ原の戦いのときには西軍、豊臣側に付いていた武将だが、後に徳川家康にも気に入られる高い能力を持った人物だ。
そしてこの小説における最大の肝は関ケ原の戦いが「終わって数十年後」を舞台としているところである。家康の孫、徳川家光に呼び出された晩年の宗茂は「祖父である神君家康がいかにして関ケ原を勝ち抜いたのか、考えを聞かせてほしい」と頼まれる。事細かに語るにも自分は元々、豊臣側の武将。徳川家に失礼がないように、だが向こうの求める真実を語るというかなりの難題を吹っ掛けられる。このパワーバランスも「関ケ原の戦い」が生み出したもので、読んでるこちらは宗茂の語りと彼の心中によって関ケ原が「浮かび上がってくる」。こんな見せ方の時代小説、初めて読んだ。上司への気遣いの会話の緊張が読んでるこちらにも伝わってくる。面白い。
また宗茂は家光の姉である天寿院とも会合することになるのだが、ここも実に粋なやりとりの連続で読みごたえがあった。
この新しい切り口の関ケ原の戦いを体感してもらいたい。時代小説といえばあの出版社の棚だな……とお馴染みの棚を見てしまっているなら、次は早川書房の棚もぜひチェックしてほしい。 (早川書房 1056円)



















