著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

公開日: 更新日:

「尚、赫々たれ」羽鳥好之著

 書店で働きはじめてから、各出版社のカラーみたいなものが分かるようになってきた。ここの出版社はビジネス書が強い、この出版社は資格書メインなんだな……というのもあれば「文芸メイン」の出版社の中でもそれぞれこのジャンルが強いなと特色が出ている。

 ここであげたいのが早川書房である。昭和20(1945)年設立の歴史ある出版社で強いのはSFとミステリー。国内だけでなく海外翻訳においても確固たる地位を築き上げた印象だ。そんな早川書房、実は最近「時代小説」が熱いのだ。7年前に新レーベル「ハヤカワ時代ミステリ文庫」を立ち上げたし、ミステリーでなくても今回紹介する本作のように上質な時代小説もそろっている。

 本作のメインテーマは「関ケ原の戦い」。今まで数多くの作家が取り上げてきている戦国時代最大級の出来事だが、この小説は明らかにほかの作品と「関ケ原の戦い」の見せ方を変えているのだ。

 まず主人公が立花宗茂。渋い。関ケ原の戦いのときには西軍、豊臣側に付いていた武将だが、後に徳川家康にも気に入られる高い能力を持った人物だ。

 そしてこの小説における最大の肝は関ケ原の戦いが「終わって数十年後」を舞台としているところである。家康の孫、徳川家光に呼び出された晩年の宗茂は「祖父である神君家康がいかにして関ケ原を勝ち抜いたのか、考えを聞かせてほしい」と頼まれる。事細かに語るにも自分は元々、豊臣側の武将。徳川家に失礼がないように、だが向こうの求める真実を語るというかなりの難題を吹っ掛けられる。このパワーバランスも「関ケ原の戦い」が生み出したもので、読んでるこちらは宗茂の語りと彼の心中によって関ケ原が「浮かび上がってくる」。こんな見せ方の時代小説、初めて読んだ。上司への気遣いの会話の緊張が読んでるこちらにも伝わってくる。面白い。

 また宗茂は家光の姉である天寿院とも会合することになるのだが、ここも実に粋なやりとりの連続で読みごたえがあった。

 この新しい切り口の関ケ原の戦いを体感してもらいたい。時代小説といえばあの出版社の棚だな……とお馴染みの棚を見てしまっているなら、次は早川書房の棚もぜひチェックしてほしい。 (早川書房 1056円)


【連載】書店員芸人カモシダせぶんの「いい本入ってますよ!」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  2. 2

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  3. 3

    嶋基宏は一時期ノイローゼ状態になっていた...心ここにあらずで、魂が抜けた状態に

  4. 4

    伊藤健太郎とキンプリ永瀬廉で明暗クッキリ…「熱愛報道」出口夏希の足を引っ張りかねない“イメージ格差”

  5. 5

    なぜ「愛子天皇」ではダメなのか? 美智子さまが心情を吐露する出版物を準備中…と政界で話題

  1. 6

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  2. 7

    視聴率の取れない枠にハマった和久田麻由子アナの不運 与えられているのは「誰でもできる役割」のみ

  3. 8

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  4. 9

    居酒屋倒産が過去最多ペース 客離れの背景にある「飲み放題5000円」の壁

  5. 10

    巨人“育成の星”のアクシデントに阿部監督は顔面硬直、原辰徳氏は絶句…桑田真澄氏の懸念が現実に